一 準備書面の第一審口頭弁論期日における陳述がなされなかつたからといつて、控訴審でこれに記載されている主張をするかどうかを確かめる釈明義務はない。 二 (省略)
一 釈明義務がないとされた事例 二 尋問事項書の提出がない証人の取調をしなかつたことが違法でないとされた事例
民訴法127条,民訴法259条
判旨
口頭弁論期日に出頭しながら陳述されなかった準備書面の記載内容について、裁判所が釈明権を行使してその主張を維持するか否かを確認する義務はない。
問題の所在(論点)
口頭弁論期日に出頭した当事者が、提出済みの準備書面を陳述しなかった場合において、裁判所がその主張の真意を問うべき釈明義務(民事訴訟法旧127条、現149条)を負うか。
規範
当事者が口頭弁論期日に出頭し、弁論を行う機会を与えられていたにもかかわらず、提出済みの準備書面を陳述しなかった場合、裁判所は当該準備書面記載の主張を維持するか否かについて釈明を求め、その主張を確かめるべき義務を負わない。
重要事実
被告(上告人)らは、第一審において特定の主張を記載した準備書面を提出していたが、口頭弁論期日に代理人が出頭した際、当該準備書面を陳述しなかった。第一審判決では、被告側が原告の土地所有権を認める旨の答弁をしたと記載され、控訴審においても上告人代理人は、第一審での口頭弁論の結果(所有権を認める旨の陳述)をそのまま引用して陳述した。その後、上告人らは釈明権行使の欠怠等を理由に上告した。
事件番号: 昭和30(オ)326 / 裁判年月日: 昭和32年10月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が提出した書面等に記載があるのみで、事実審の弁論等において適切に主張されなかった事項については、裁判所は釈明権を行使してその主張を明確にさせる義務を負わない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地の昭和25年7月当時の賃料統制額や土地等級に関する主張を答弁書に記載していた。しかし、第一審判決…
あてはめ
本件では、上告人ら代理人は第一審の口頭弁論期日に出頭しており、準備書面を陳述する機会は十分に与えられていた。しかし、当該期日に陳述がなされず、むしろ相手方の所有権を認める旨の第一審判決の事実摘示を控訴審においても引用・陳述している。このような状況下では、提出済みだが陳述されていない準備書面の記載内容について、あえて裁判所がその維持の有無を問い直す必要はない。
結論
裁判所に釈明義務の違反(審理不尽の違法)は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
弁論主義の下では、裁判資料となるのは口頭弁論で陳述された事実に限られる。書面を提出しても陳述しなければ主張として扱われないのが原則であり、出頭している当事者が陳述を怠った場合にまで裁判所の釈明義務を認めるのは、裁判所の不偏不党性を害し、弁論主義の原則を逸脱することになるため、本判決はその限界を明確にしたものといえる。
事件番号: 昭和39(オ)125 / 裁判年月日: 昭和39年11月26日 / 結論: 棄却
論旨は、原審は上告人に買収請求権行使の点につき釈明を求むべきであつたのに右釈明義務を果たしていないという。しかし、当事者の一方がある権利を取得したことをうかがわしめるような事実が訴訟上あらわれたにかかわらず、その当事者がこれを行使しない場合にあつても、裁判所はその者に対しその権利行使の意思の有無をたしかめ、あるいは、そ…
事件番号: 昭和37(オ)639 / 裁判年月日: 昭和38年10月15日 / 結論: 棄却
民事調停規則第五条は、調停の申立があつた事件につき訴訟が繋属する場合において、右訴訟手続を中止するか否かを裁判所の自由裁量に委ねた趣旨と解すべきである(昭和二七年(オ)第五七一号昭和二八年一月二三日第二小法廷判決、民集七巻一号九二頁と同旨)。
事件番号: 昭和34(オ)710 / 裁判年月日: 昭和36年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が釈明権を行使しなかったとしても、他の証拠により事実認定が維持される場合には、判決の結果に影響を及ぼすべき違法があるとはいえない。 第1 事案の概要:上告人は、本件係争地を買い受けたと主張したが、原審は証拠に基づき、上告人が被上告人の先代から土地を賃借したものであると認定した。上告人は、永代…
事件番号: 昭和44(オ)1053 / 裁判年月日: 昭和45年2月6日 / 結論: 棄却
口頭弁論調書に準備書面が陳述された旨の記載がなく、かつ、その記載のないことにつき当事者から異議の述べられた形跡のない場合においては、特段の事情のないかぎり、右準備書面は口頭弁論期日に陳述されなかつたものというべきである。