口頭弁論調書に準備書面が陳述された旨の記載がなく、かつ、その記載のないことにつき当事者から異議の述べられた形跡のない場合においては、特段の事情のないかぎり、右準備書面は口頭弁論期日に陳述されなかつたものというべきである。
準備書面の陳述の有無と調書の記載
民訴法146条,民訴法147条
判旨
準備書面が陳述された旨の口頭弁論調書への記載がなく、異議の申立てもない場合には、特段の事情のない限り、当該準備書面は口頭弁論期日に陳述されなかったものと解される。
問題の所在(論点)
口頭弁論調書に陳述の記載がない準備書面について、当事者による異議がない場合に、当該書面の陳述があったと認められるか。口頭弁論調書の証拠力および陳述の有無の判断基準が問題となる。
規範
準備書面が口頭弁論期日に陳述されたか否かは、口頭弁論調書の記載に基づいて判断される。調書に陳述の記載がなく、かつその不記載について当事者から異議が述べられた形跡がない場合、特段の事情のない限り、当該準備書面は陳述されなかったものとみなされる。
重要事実
上告人が提出した準備書面について、原審(第二審)の口頭弁論調書にはこれが陳述された旨の記載がなかった。また、その記載がないことに対して、当事者から異議が述べられた形跡も記録上認められなかった。上告人は、当該準備書面が陳述されたことを前提として上告理由を主張した。
事件番号: 昭和37(オ)106 / 裁判年月日: 昭和38年6月7日 / 結論: 棄却
一 準備書面の第一審口頭弁論期日における陳述がなされなかつたからといつて、控訴審でこれに記載されている主張をするかどうかを確かめる釈明義務はない。 二 (省略)
あてはめ
本件記録によれば、原審の口頭弁論調書には所論の準備書面が陳述された旨の記載が存在しない。加えて、この不記載について当事者が異議を述べた形跡も認められない。他に陳述があったことを裏付ける証拠も存在しない以上、本件においては「特段の事情」があるとはいえず、当該準備書面は結局のところ原審で陳述されなかったものといわざるをえない。
結論
所論の準備書面は原審で陳述されたとは認められず、これを前提とする上告理由は理由がないため、上告を棄却する。
実務上の射程
口頭弁論の調書は、弁論の方式に関する規定の遵守を証明する唯一の証拠となる(民事訴訟法160条3項参照)。本判決は、書面による準備があったとしても、調書上の記載と異議の有無によりその陳述の有無を厳格に判断する実務上の基準を示しており、調書の正確性を担保しつつ、当事者の手続的な関与(異議申立て)を重視している。
事件番号: 昭和40(オ)1160 / 裁判年月日: 昭和42年1月12日 / 結論: 棄却
当事者尋問のため出頭した当事者本人の出頭を口頭弁論調書に記載することは必要でない。
事件番号: 昭和27(オ)1059 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が実質的に法令違反や事実認定の不当を主張するものに過ぎず、民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の上告事由に該当しないとして棄却された事例である。 第1 事案の概要:上告人は、原判決における憲法違反等を主張して上告を提起した。また、原審の口頭弁論に関与した裁判官の署名捺印の有無に…
事件番号: 昭和36(オ)134 / 裁判年月日: 昭和36年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】口頭弁論調書に主張を撤回する旨の陳述が記載されている場合、その記載が誤りである旨の立証がなされない限り、当該主張の撤回があったものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人らは、原審(控訴審)の第2回口頭弁論において、代理人を通じて「従来の地上権に基づく主張は当審において撤回する」旨の準備書面を陳述…
事件番号: 昭和30(オ)551 / 裁判年月日: 昭和30年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠申請に対し、採用しない旨の決定を口頭弁論調書に明記せず、証拠調べを行わないまま弁論を終結させた場合であっても、訴訟の指揮及び経過から取調の要なしとして暗黙に排斥したものと認められるときは適法である。 第1 事案の概要:上告人は、原審において証拠申請を行ったが、口頭弁論調書にはこの申請を…