判旨
口頭弁論調書に主張を撤回する旨の陳述が記載されている場合、その記載が誤りである旨の立証がなされない限り、当該主張の撤回があったものとみなされる。
問題の所在(論点)
口頭弁論調書に主張の撤回が記録されている場合において、当事者が後にその撤回を否定し、元の主張に基づき判決の違法を主張できるか。また、調書の記載内容の効力(民事訴訟法上の調書の証明力)が問題となる。
規範
口頭弁論の調書は、公務員が職務上作成した文書であり、その記載内容には高度の証明力が認められる。したがって、調書に特定の主張を撤回する旨の記載がある場合、当該記載が誤りであることを証拠によって覆さない限り、法的にはその記載通りに主張の撤回がなされたものとして取り扱われる。
重要事実
上告人らは、原審(控訴審)の第2回口頭弁論において、代理人を通じて「従来の地上権に基づく主張は当審において撤回する」旨の準備書面を陳述し、実際に撤回する旨を述べたことが口頭弁論調書に記載されていた。これに対し上告人らは、上告審において当該主張を撤回していないと争ったが、調書の記載が誤っていることを証明するための証拠は提出しなかった。
あてはめ
本件において、原審の口頭弁論調書には、上告人側の代理人が地上権の時効取得に基づく主張を明示的に撤回した旨が記載されている。上告人らはこの調書の記載が事実と異なると主張するものの、その誤りを裏付ける客観的な証拠を何ら提出していない。この場合、調書の記載に基づく「主張の撤回」という訴訟上の事実を否定することはできず、撤回した主張を前提とする判決の違法性の訴えは認められない。
結論
口頭弁論調書の記載に従い主張の撤回が認められるため、上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和34(オ)877 / 裁判年月日: 昭和36年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者にとって不利益な事実を認める陳述は裁判上の自白に該当し、その撤回は、自白が真実、かつ、錯誤に基づくことが証明された場合に限られる。 第1 事案の概要:本件土地賃貸借を巡る訴訟において、被告(上告人)は第一審において、本件土地の賃借人および地上建物の所有者が自身ではなく、一審の共同被告(D)で…
判決前の訴訟手続(民事訴訟法160条等)に関する判断。調書の記載が訴訟手続の遵守を証明する唯一の証拠となる(同法160条3項参照)点に関連し、当事者の攻撃防御方法の撤回という訴訟行為の有無についても、調書の記載が決定的な証拠力を有することを示している。実務上、調書の記載ミスは更正の申立て等で直ちに是正すべきであり、特段の立証がない限り調書の記載は絶対的なものとして扱われる。
事件番号: 昭和33(オ)529 / 裁判年月日: 昭和36年12月8日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白がなされた後であっても、相手方が自白の撤回に対して異議を述べなかった場合には、その自白の撤回は有効となる。したがって、裁判所は当該事実を争いのある事実として取り扱わなければならない。 第1 事案の概要:土地所有者であると主張する被上告人が、賃借人とされる上告人に対し賃料を請求した事案。…
事件番号: 昭和39(オ)573 / 裁判年月日: 昭和40年12月2日 / 結論: 棄却
訴の変更があつた場合においては、従前の訴訟資料はそのまま引きつがれると解するのが相当である。
事件番号: 昭和31(オ)336 / 裁判年月日: 昭和32年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が行った売買の合意に関する陳述が、弁論の全趣旨に照らして所有権移転を伴わない契約を意味すると解される場合には、自己の所有でないことを自白したものとは認められない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)の代理人が、第一審において「原告と訴外Dとの間で本件土地の売買約束が成立し、引渡期限は本件訴訟…
事件番号: 昭和35(オ)1037 / 裁判年月日: 昭和36年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】口頭弁論において当事者間に争いのない事実は自白としての効力を有し、裁判所はこれに拘束される。そのため、提出された証拠の記載が自白の内容と矛盾する場合であっても、裁判所は自白に反する事実認定を行うことはできない。 第1 事案の概要:本件土地の所有権について、被上告人の所有に属する事実が第一審判決の事…