判旨
口頭弁論において当事者間に争いのない事実は自白としての効力を有し、裁判所はこれに拘束される。そのため、提出された証拠の記載が自白の内容と矛盾する場合であっても、裁判所は自白に反する事実認定を行うことはできない。
問題の所在(論点)
当事者間に争いのない事実(裁判上の自白)が成立している場合、裁判所は証拠の内容にかかわらず、その自白に拘束されて事実を認定すべきか。
規範
民事訴訟法における裁判上の自白が成立した場合、裁判所はその事実に拘束され、これに反する認定をすることは許されない(不要証事実)。
重要事実
本件土地の所有権について、被上告人の所有に属する事実が第一審判決の事実摘示において「当事者間に争いのない事実」として陳述されていた。しかし、上告人は特定の書証に自白と異なる内容の記載があることを理由に、原審が自白に拘束されたことを違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件土地が被上告人の所有に属する事実は、原審において双方代理人により陳述された事実摘示によれば、当事者間に争いのない事実として扱われている。これは上告人の自白に該当する。したがって、上告人が指摘する書証に自白と異なる記載があったとしても、裁判所は自白による拘束力を受け、証拠に基づいて自白に反する認定を行うことはできない。原審が自白に従って事実を認定したことに違法はない。
結論
自白が成立している以上、裁判所は証拠の有無や内容にかかわらず自白に拘束されるため、原判決に違法はなく上告は棄却される。
実務上の射程
弁論主義の第2テーゼ(自白の拘束力)を確認した判例である。司法試験においては、主要事実について自白が成立している場合に、裁判所が証拠調べの結果に基づいて自白と異なる認定をすることが許されない(自由心証主義の制限)という文脈で論証に用いる。
事件番号: 昭和34(オ)395 / 裁判年月日: 昭和37年1月9日 / 結論: 棄却
原判決は争いある事実を争いないと判示しているが、右事実は第一審が証拠によつて認定した事実と同一であり、右確定事実を基礎としてなされた原判決の違法は判決に影響を及ぼすこと明らかなものとはいえない。
事件番号: 昭和28(オ)230 / 裁判年月日: 昭和30年4月21日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】当事者が抗弁として主張していない事実(示談による土地使用権の存在)を裁判所が認定し、それを根拠に請求を棄却することは、弁論主義に違反し許されない。 第1 事案の概要:上告人(所有者)が被上告人らに対し、建物収去土地明渡を請求した。被上告人らは「賃借権譲渡の承諾を受けた」との抗弁を主張したが、原審は…
事件番号: 昭和31(オ)336 / 裁判年月日: 昭和32年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が行った売買の合意に関する陳述が、弁論の全趣旨に照らして所有権移転を伴わない契約を意味すると解される場合には、自己の所有でないことを自白したものとは認められない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)の代理人が、第一審において「原告と訴外Dとの間で本件土地の売買約束が成立し、引渡期限は本件訴訟…
事件番号: 昭和34(オ)877 / 裁判年月日: 昭和36年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者にとって不利益な事実を認める陳述は裁判上の自白に該当し、その撤回は、自白が真実、かつ、錯誤に基づくことが証明された場合に限られる。 第1 事案の概要:本件土地賃貸借を巡る訴訟において、被告(上告人)は第一審において、本件土地の賃借人および地上建物の所有者が自身ではなく、一審の共同被告(D)で…
事件番号: 昭和36(オ)93 / 裁判年月日: 昭和38年10月3日 / 結論: 棄却
原裁判所の裁判が公正妥当を欠くものであるとしても、裁判所において裁判を受ける権利を奪われたものとはいえないから、右裁判が憲法第三二条に違反したとはいえない(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判決、刑集二巻五号五一一頁、昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決、刑集三巻三号三五二頁参照)。