判旨
当事者が抗弁として主張していない事実(示談による土地使用権の存在)を裁判所が認定し、それを根拠に請求を棄却することは、弁論主義に違反し許されない。
問題の所在(論点)
当事者が抗弁として明示的に主張していない権利発生原因事実(示談による使用権の存在)を、裁判所が証拠等から勝手に認定し、判決の基礎とすることは許されるか。
規範
裁判所は、当事者が主張しない事実を判決の基礎として採用することはできない(弁論主義の第一テーゼ)。特に抗弁的事実については、被告による具体的な主張がなされて初めて審理の対象となる。
重要事実
上告人(所有者)が被上告人らに対し、建物収去土地明渡を請求した。被上告人らは「賃借権譲渡の承諾を受けた」との抗弁を主張したが、原審はこれを否定しつつ、被上告人らが主張していない「示談によって土地使用を許容された」という事実を認定し、土地使用権の存在を認めて上告人の請求を棄却した。
あてはめ
本件において、被上告人らが主張した抗弁は「土地賃借権の譲渡の承諾」の一点であった。しかし、原審は被上告人が主張していない「示談契約」に基づく土地使用権を認定し、これを被上告人の利益に帰せしめた。これは、当事者の主張しない事実に基づき裁判を行ったものであり、弁論主義に抵触する違法な判示であるといえる。
結論
示談契約による土地使用権の存在を被告が抗弁として主張していない以上、これを基礎として請求を棄却した原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
弁論主義の基本原則(第一テーゼ)を確認する判例。司法試験においては、主要事実(本件では権利障害・阻止の基礎となる契約事実)について当事者の主張が必要であることを論じる際の基礎として活用できる。裁判所が職権で認定できる範囲の限界を示す事案として重要である。
事件番号: 昭和38(オ)273 / 裁判年月日: 昭和38年12月17日 / 結論: 破棄差戻
相当期間を経過しても滞納地代を支払はないときは賃貸借の解除権が発生する旨の合意が成立した事実を認定したうえ、相当期間内に右支払をしなかつたことにより賃貸借契約は解除されたと判断した場合に、右合意成立の事実が当事者によつて主張されていない以上、当事者の主張しない事実に基づいて判決した違法があるといわざるをえない。
事件番号: 昭和35(オ)1037 / 裁判年月日: 昭和36年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】口頭弁論において当事者間に争いのない事実は自白としての効力を有し、裁判所はこれに拘束される。そのため、提出された証拠の記載が自白の内容と矛盾する場合であっても、裁判所は自白に反する事実認定を行うことはできない。 第1 事案の概要:本件土地の所有権について、被上告人の所有に属する事実が第一審判決の事…
事件番号: 昭和36(オ)93 / 裁判年月日: 昭和38年10月3日 / 結論: 棄却
原裁判所の裁判が公正妥当を欠くものであるとしても、裁判所において裁判を受ける権利を奪われたものとはいえないから、右裁判が憲法第三二条に違反したとはいえない(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判決、刑集二巻五号五一一頁、昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決、刑集三巻三号三五二頁参照)。
事件番号: 昭和28(オ)1373 / 裁判年月日: 昭和30年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政主体が土地の所有権を取得したという事実が認められない場合には、当該事実を前提とする主張は採用されない。判決文は、原審の証拠に基づき所有権帰属の事実を否定した判断を維持したものである。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地が八幡浜市の所有に帰したことを前提として法的主張を展開した。しかし、原審(…
事件番号: 昭和31(オ)289 / 裁判年月日: 昭和31年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の適法な事実認定を非難するものにすぎない場合、民事訴訟法上の適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人らが原審の事実認定を不服として上告を提起したが、上告理由の内容は、原審の証拠評価や事実認定のプロセスに対する非難を主とするものであった。 第2 問題の所在(論点):事実…