相当期間を経過しても滞納地代を支払はないときは賃貸借の解除権が発生する旨の合意が成立した事実を認定したうえ、相当期間内に右支払をしなかつたことにより賃貸借契約は解除されたと判断した場合に、右合意成立の事実が当事者によつて主張されていない以上、当事者の主張しない事実に基づいて判決した違法があるといわざるをえない。
当事者の主張しない事実に基づいて判断をした違法があるとされた事例。
民訴法186条
判旨
裁判所は、当事者が口頭弁論において主張していない事実を基礎として判決を下すことはできず、これに反した判決は弁論主義の原則に違反し違法である。
問題の所在(論点)
裁判所が当事者の主張していない事実を認定して判決の基礎とすることは、弁論主義に反し許されないか。
規範
弁論主義の第一命題に基づき、裁判所は当事者が主張しない主要事実を判決の基礎とすることはできない。これに違反し、当事者の主張しない事実を認定して結論を導くことは、訴訟当事者への不意打ちとなり、民事訴訟法上の原則に抵触する。
重要事実
被上告人(賃貸人)が上告人(賃借人)に対し、滞納地代の支払を相当期間延長し、期間経過後に支払がないときは解除権が発生する旨の合意が成立したとして、原審は賃貸借契約の解除を認めた。しかし、この合意成立の事実は、当事者のいずれからも口頭弁論において主張されていなかった。
事件番号: 昭和28(オ)230 / 裁判年月日: 昭和30年4月21日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】当事者が抗弁として主張していない事実(示談による土地使用権の存在)を裁判所が認定し、それを根拠に請求を棄却することは、弁論主義に違反し許されない。 第1 事案の概要:上告人(所有者)が被上告人らに対し、建物収去土地明渡を請求した。被上告人らは「賃借権譲渡の承諾を受けた」との抗弁を主張したが、原審は…
あてはめ
原審が認定した「支払期間の延長および不履行による解除権発生の合意」は、本件賃貸借契約の解除という法的効果を左右する重要な事実である。しかし、記録上、本件当事者が口頭弁論において右事実を主張した形跡は認められない。したがって、裁判所が独断でこの事実を認定し、これに基づいて上告人の不利益に判決を下したことは、弁論主義の適用を誤ったものといえる。
結論
原判決には当事者の主張しない事実に基づいて判決をした違法がある。したがって、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
弁論主義違反(第一命題)を端的に示した重要判例である。答案上では、主要事実(本件では権利発生に関する合意)について当事者の主張があるかを確認し、主張がないにもかかわらず裁判所が事実認定を行っている場合に、違法事由として本判例を引用すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)1373 / 裁判年月日: 昭和30年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政主体が土地の所有権を取得したという事実が認められない場合には、当該事実を前提とする主張は採用されない。判決文は、原審の証拠に基づき所有権帰属の事実を否定した判断を維持したものである。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地が八幡浜市の所有に帰したことを前提として法的主張を展開した。しかし、原審(…
事件番号: 昭和36(オ)93 / 裁判年月日: 昭和38年10月3日 / 結論: 棄却
原裁判所の裁判が公正妥当を欠くものであるとしても、裁判所において裁判を受ける権利を奪われたものとはいえないから、右裁判が憲法第三二条に違反したとはいえない(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判決、刑集二巻五号五一一頁、昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決、刑集三巻三号三五二頁参照)。
事件番号: 昭和28(オ)1210 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が、事実誤認、単なる法令違背、または第一審と異なる認定・解釈の理由不開示にすぎない場合は、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」の定める重要事項に該当せず、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が争いのある事実を争いがないと誤認した点や、第一審…
事件番号: 昭和28(オ)627 / 裁判年月日: 昭和30年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約における解約の申入れが効力を生じない以上、その後の明渡請求は権利の濫用を検討するまでもなく認められない。また、原判決が主たる理由に加えて権利の濫用という予備的・付加的な判示をしたとしても、主たる理由が正当である限り、その付加的部分に対する不服は上告理由として採用されない。 第1 事案の概…