判旨
裁判所が釈明権を行使しなかったとしても、他の証拠により事実認定が維持される場合には、判決の結果に影響を及ぼすべき違法があるとはいえない。
問題の所在(論点)
裁判所が特定の事実(永代借地料の支払い等)について釈明を行わなかったことが、判決の結果に影響を及ぼすべき違法(民事訴訟法上の釈明義務違反)にあたるか。
規範
裁判所には適切な事案解明のための釈明権(民事訴訟法149条参照)が認められるが、ある事項について釈明を行わなかったとしても、それが判決の結論に影響を及ぼさない場合には、釈明義務違反の違法は認められない。
重要事実
上告人は、本件係争地を買い受けたと主張したが、原審は証拠に基づき、上告人が被上告人の先代から土地を賃借したものであると認定した。上告人は、永代借地料の一部を支払ったという主張について裁判所が釈明を行わなかったことが違法であると主張して上告した。
あてはめ
仮に釈明が行われ、その結果として自白が存在しなかったものと扱われたとしても、原審は他の挙示された証拠によって、上告人が土地を買受けたのではなく賃借したものであるという事実を適法に認定している。したがって、釈明の有無は事実認定の結論を左右するものではないといえる。
結論
本件における釈明の不行使は、原判決の結果に影響を及ぼすべき違法とはいえず、上告は棄却される。
実務上の射程
釈明義務違反を理由とする上告において、当該釈明の欠如が実質的に裁判の結果に影響を与えない場合には、上告理由として不適法または理由なしとされる実務上の判断枠組みを示している。
事件番号: 昭和39(オ)125 / 裁判年月日: 昭和39年11月26日 / 結論: 棄却
論旨は、原審は上告人に買収請求権行使の点につき釈明を求むべきであつたのに右釈明義務を果たしていないという。しかし、当事者の一方がある権利を取得したことをうかがわしめるような事実が訴訟上あらわれたにかかわらず、その当事者がこれを行使しない場合にあつても、裁判所はその者に対しその権利行使の意思の有無をたしかめ、あるいは、そ…
事件番号: 昭和37(オ)106 / 裁判年月日: 昭和38年6月7日 / 結論: 棄却
一 準備書面の第一審口頭弁論期日における陳述がなされなかつたからといつて、控訴審でこれに記載されている主張をするかどうかを確かめる釈明義務はない。 二 (省略)
事件番号: 昭和26(オ)644 / 裁判年月日: 昭和27年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地権の譲受や使用貸借契約の成立といった事実認定の不当を憲法違反として主張することは、実質的に事実認定を争うものにすぎず、適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、本件宅地の借地権を被上告人から譲り受けた事実、または被上告人から建物所有目的で期間の定めなく無償で使用することを許諾さ…
事件番号: 昭和34(オ)205 / 裁判年月日: 昭和35年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の成否について、原判決の事実認定に法令違背はなく、証拠の取捨選択および判断は事実審の裁量に属する事柄であるとして、上告を棄却した。 第1 事案の概要:上告人は、相手方との間で売買契約が成立したと主張したが、原審(第一審および控訴審)は、上告人が主張する経緯の一部はむしろ売買が成立しない経緯…
事件番号: 昭和28(オ)1210 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が、事実誤認、単なる法令違背、または第一審と異なる認定・解釈の理由不開示にすぎない場合は、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」の定める重要事項に該当せず、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が争いのある事実を争いがないと誤認した点や、第一審…