判旨
売買契約の成否について、原判決の事実認定に法令違背はなく、証拠の取捨選択および判断は事実審の裁量に属する事柄であるとして、上告を棄却した。
問題の所在(論点)
当事者間に売買契約が成立したといえるか。また、原審における事実認定や証拠の取捨選択に、上告理由となるような法令違背や裁量の逸脱が認められるか。
規範
売買契約の成立の有無を判断するにあたっては、当事者間の意思表示の合致という客観的事実が必要であり、その認定に供する証拠の取捨選択および事実認定は、特段の事情がない限り事実審の専権事項(裁量)に属する。
重要事実
上告人は、相手方との間で売買契約が成立したと主張したが、原審(第一審および控訴審)は、上告人が主張する経緯の一部はむしろ売買が成立しない経緯を示すものであると判断し、契約の成立を認めなかった。これに対し、上告人は法令違背や事実認定の誤りを主張して上告した。
あてはめ
原判決が摘示した事実は、上告人が主張する売買成立を肯定するものではなく、むしろ売買が成立しなかった経緯の一部として示されたものである。したがって、上告人の主張は原審が確定した事実に反する独自の主張にすぎない。また、証拠の取捨選択や判断は原審(事実審)の合理的な裁量に属する事柄であり、これを不当とする非難は適法な上告理由には当たらない。
結論
本件売買契約の成立を否定した原判決に法令違背はなく、証拠判断も適法である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
契約の成否が争われる実務上、事実審による証拠評価と事実認定の重要性を示す。答案上は、契約成立の要件である意思表示の合致の有無を、客観的な証拠や取引の経緯から認定すべきことを補強する趣旨で参照し得る。
事件番号: 昭和33(オ)345 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原審で主張していなかった新たな事実上の主張を基礎として原判決の違法をいうことは、民事訴訟の手続上許されない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)からなされた月額5,000円の延滞賃料の催告に基づく契約解除を争っていた。上告人は、上告審において、当該催告より以前…
事件番号: 昭和34(オ)395 / 裁判年月日: 昭和37年1月9日 / 結論: 棄却
原判決は争いある事実を争いないと判示しているが、右事実は第一審が証拠によつて認定した事実と同一であり、右確定事実を基礎としてなされた原判決の違法は判決に影響を及ぼすこと明らかなものとはいえない。
事件番号: 昭和34(オ)759 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の濫用(民法1条3項)の成否は、原審が確定した事実に即して判断されるべきであり、権利行使が正当な範囲を逸脱していると認められない限り、その請求は容認される。 第1 事案の概要:本判決文からは具体的な事案の詳細は不明であるが、上告人が被上告人の請求に対し、民法1条に違反する権利の濫用であると主張…
事件番号: 昭和35(オ)53 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法1条3項の権利濫用について、契約解除権の行使が権利の濫用にあたると解すべき根拠となる事実が認められない場合には、当該解除は有効である。原審が確定した事実関係の範囲内では、解除権の行使を不当とする事情がなく、権利濫用には当たらないとした判断を維持した。 第1 事案の概要:本件は契約の解除権行使の…
事件番号: 昭和34(オ)1276 / 裁判年月日: 昭和35年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強制競売によって建物の所有権を取得した事実は、登記の推定力に依拠せずとも、執行手続等の客観的事実に基づき認定することができる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、強制競売の手続を通じて、本件建物および宅地の所有権を取得した。これに対し、上告人(被告)側は、原審が「登記の推定力」によって被上告人…