民事調停規則第五条は、調停の申立があつた事件につき訴訟が繋属する場合において、右訴訟手続を中止するか否かを裁判所の自由裁量に委ねた趣旨と解すべきである(昭和二七年(オ)第五七一号昭和二八年一月二三日第二小法廷判決、民集七巻一号九二頁と同旨)。
民事調停規則第五条の法意。
民事調停規則5条
判旨
民事調停規則5条に基づく訴訟手続の中止は裁判所の自由裁量に属し、また被告が期日に欠席し書面でも争わない事実は自白したものとみなされ、裁判所に釈明義務は生じない。
問題の所在(論点)
1. 調停の申立てがあった場合に、訴訟手続を中止しなかったことが違法となるか。2. 被告が期日に欠席し具体的な反論をしない場合に、原告の主張事実を「明らかに争わないもの」として自白を擬制し、釈明なく判決を下すことは許されるか。
規範
1. 民事調停規則5条(現行:民事調停法20条・民事調停規則13条参照)は、調停申立があった事件について訴訟手続を中止するか否かを裁判所の自由裁量に委ねた趣旨である。2. 適式の呼出しを受けながら期日に出頭せず、答弁書等の準備書面も提出しない場合において、相手方の主張事実を明らかに争わないときは、これを自白したものとみなす(擬制自白)。この場合、特段の事情がない限り裁判所は釈明権を行使すべき義務を負わない。
重要事実
被上告人(原告)が土地の占有に関して上告人(被告)を訴えた。被告は、第一審および原審(控訴審)において適式な呼出しを受けたが、口頭弁論期日にいずれも出頭しなかった。被告は控訴状を提出し陳述したものとみなされたが、その内容には「被告が建物の所有権を取得した」といった具体的な反論の事実は記載されていなかった。一方で、原告は「D社が建物を所有し、被告がこれに居住することで土地を占有している」と主張していた。被告はこれに対し、答弁書等の書面も提出しなかった。
事件番号: 昭和28(オ)707 / 裁判年月日: 昭和29年2月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】調停申立てがあった場合に訴訟を中止するか否かは、民事調停規則5条に基づき、裁判所の裁量によって決すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、調停の申立てがあったにもかかわらず原審が訴訟手続を中止しなかったことを違法として上告した。また、原審において裁判官の更迭があったにもかかわらず適切な手続が取ら…
あてはめ
1. 民事調停規則5条の解釈に基づき、中止の有無は裁判所の裁量であるため、中止しなかったことに違法はない。2. 被告は期日に出頭せず、また陳述したとみなされる控訴状においても権利取得の主張をしておらず、答弁書等の書面も皆無であった。このような状況下では、原告が主張する土地占有の事実は「明らかに争わないところ」といえる。したがって、裁判所が当該事実を確定したことは正当であり、自白が成立している以上、さらに被告の有利な事実を探索するための釈明をなすべき必要も認められない。
結論
原判決に違法はなく、上告を棄却する。裁判所が調停を理由に訴訟を中止しなかったことや、不出頭の被告に対し釈明を行わずに擬制自白を認めた判断は、いずれも適法である。
実務上の射程
訴訟における被告の不活性(不出頭・不主張)が擬制自白(民訴法159条3項・1項)を招くプロセスを示す典型例である。また、釈明権の限界について、当事者が全く主張しない事実についてまで裁判所が積極的に示唆・探知すべき義務はないことを確認する際に応用できる。
事件番号: 昭和37(オ)106 / 裁判年月日: 昭和38年6月7日 / 結論: 棄却
一 準備書面の第一審口頭弁論期日における陳述がなされなかつたからといつて、控訴審でこれに記載されている主張をするかどうかを確かめる釈明義務はない。 二 (省略)
事件番号: 昭和38(オ)909 / 裁判年月日: 昭和39年6月25日 / 結論: 棄却
証言及び当事者本人尋問の結果の採否について具体的事由を説示することなく単にこれを措信し難いとした点に違法はない(昭和三〇年(オ)第八五一号、昭和三二年六月一一日第三小法廷判決、民集一一巻六号一〇三〇頁参照)。
事件番号: 昭和36(オ)93 / 裁判年月日: 昭和38年10月3日 / 結論: 棄却
原裁判所の裁判が公正妥当を欠くものであるとしても、裁判所において裁判を受ける権利を奪われたものとはいえないから、右裁判が憲法第三二条に違反したとはいえない(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判決、刑集二巻五号五一一頁、昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決、刑集三巻三号三五二頁参照)。
事件番号: 昭和35(オ)318 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
土地の貸借関係が賃貸借か使用貸借であるかが争点である事件において、貸主が同一人である係争土地の隣地の貸借関係が賃貸借であるからといつて、その故に直ちに係争土地の貸借関係を賃貸借と認定すべきではない。