反証として当事者本人尋問の申請があつた場合において、当該申請について尋問事項書が提出されず、当該本人が裁判所の指定した尋問期日に出頭せず、かつ、その不出頭についての正当の事由が疎明されなかつたときは、当該本人が唯一の証拠方法であつても、裁判所は、必ずしも、これを尋問することを要しない。
唯一の証拠方法を却下しても違法でないとされた事例。
民訴法259条
判旨
当事者本人が唯一の証拠方法である場合であっても、尋問事項を提出せず、正当な理由なく尋問期日に出頭しない等の事情があるときは、裁判所は当該尋問申請を却下することができる。
問題の所在(論点)
当事者本人の尋問申請が唯一の証拠方法である場合、裁判所は必ずこれを取り調べなければならないか。証拠決定の自由(民事訴訟法181条1項参照)の限界が問題となる。
規範
裁判所は、当事者が申し出た証拠で必要でないと認めるものは、これを取り調べないことができる。当事者本人の尋問が唯一の証拠方法である場合であっても、当該当事者が尋問事項を提出せず、あるいは正当な理由なく期日に出頭しないなど、証拠調べの実施が困難または不適当と認められる特段の事情があるときは、その申請を却下することが許される。
重要事実
上告人らは、原審において被上告人の請求原因事実を一部認め、一部否認するのみで、具体的な要証事実を主張していなかった。上告人A本人の尋問申請は反証としてなされたが、上告人Aは尋問事項を提出せず、さらに原審の口頭弁論期日において、出頭できない正当な理由を疎明することなく欠席した。これを受け、原審は当該尋問申請を却下して判決を言い渡した。
事件番号: 昭和35(オ)318 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
土地の貸借関係が賃貸借か使用貸借であるかが争点である事件において、貸主が同一人である係争土地の隣地の貸借関係が賃貸借であるからといつて、その故に直ちに係争土地の貸借関係を賃貸借と認定すべきではない。
あてはめ
本件において、上告人Aは唯一の証拠方法となり得る立場であったが、尋問に不可欠な尋問事項を提出しておらず、かつ正当な理由なく期日に出頭していない。このような態度は証拠調べを拒絶または著しく遅滞させるものといえ、裁判所が当該証拠を「必要でない」と判断し、申請を却下することは適法な裁量の範囲内であると解される。
結論
唯一の証拠方法であっても、必ずしも尋問しなければならないものではない。原審が尋問申請を却下したことに違法はない。
実務上の射程
実務上、唯一の証拠については原則として取り調べるべき(唯一の証拠の原則)とされるが、本判決は、当事者側の不協力や怠慢がある場合には、例外的にその取調べを拒絶できることを示した。答案上は、証拠調べの必要性を論じる際、当事者の手続的懈怠という考慮要素として引用できる。
事件番号: 昭和30(オ)136 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が唯一の証拠として申請した本人尋問について、期日に正当な理由なく欠席し、その際代理人が他に立証はない旨を述べた場合には、証拠申請を放棄したものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人は原審において抗弁事実を立証するため、唯一の証拠として上告人本人の尋問を申請した。裁判所はこれを許容し証拠調べ…