当事者が費用の予納命令に従わないときは、裁判所は、唯一の証拠方法であつてもその取調をすることを要しない。
予納命令に従わないときは唯一の証拠方法でも取調を要しない
民訴法106条,民訴法259条
判旨
唯一の証拠方法であっても、証拠調費用の予納命令に従わない場合には、裁判所は当該証拠決定を取り消して弁論を終結させることができ、その措置に違法はない。
問題の所在(論点)
当事者が申請した証拠がいわゆる「唯一の証拠方法」にあたる場合であっても、証拠調費用の予納を怠ったことを理由に、裁判所が当該証拠決定を取り消し、証拠調べをせず弁論を終結させることは許されるか。
規範
当事者が申請した証拠が、その主張事実を証明するための唯一の証拠方法であったとしても、裁判所が命じた証拠調費用の予納義務(民事訴訟費用等に関する法律に規定される費用の予納)を怠った場合には、裁判所は適法に当該証拠決定を取り消すことができる。この場合、証拠調べを行わずに弁論を終結させることは、民事訴訟法上の正当な措置として許容される。
重要事実
上告人は、係争土地が農地であるか宅地であるか等を争点として、被上告人からの土地明渡請求を拒んでいた。原審において、上告人は自己の主張を裏付けるための証人の尋問を申請し、裁判所はこれを受け入れ証拠調べを決定するとともに、5日以内に証拠調費用を予納するよう命じた。しかし、上告人は指定された期間内に費用を予納しなかったため、原審は証拠決定を取り消し、証人尋問を実施することなく弁論を終結させ、上告人敗訴の判決を言い渡した。
事件番号: 昭和37(オ)205 / 裁判年月日: 昭和37年11月20日 / 結論: 棄却
反証として当事者本人尋問の申請があつた場合において、当該申請について尋問事項書が提出されず、当該本人が裁判所の指定した尋問期日に出頭せず、かつ、その不出頭についての正当の事由が疎明されなかつたときは、当該本人が唯一の証拠方法であつても、裁判所は、必ずしも、これを尋問することを要しない。
あてはめ
本件において、上告人は申請した証人の尋問決定を受けながら、裁判所から命じられた証拠調費用の予納を履行しなかった。たとえ当該証人が上告人の主張を立証するための唯一の証拠方法であったとしても、裁判所が命じた予納義務を果たさない以上、裁判所にはその証拠調べを強制される理由はない。したがって、予納がないことを理由として、口頭弁論期日において証拠決定を取り消し、そのまま弁論を終結させた原審の措置に違法な点は認められない。
結論
上告人の申請した証拠が唯一の証拠方法であっても、費用の予納がない限り、証拠決定を取り消して弁論を終結させた判断は正当である。
実務上の射程
唯一の証拠方法であっても、費用の予納がないなどの手続上の懈怠がある場合には、裁判所は証拠調べを拒絶できるという「唯一の証拠方法」の例外理屈として機能する。実務上は、立証責任を負う当事者の手続的義務の重要性を強調する際に参照される。
事件番号: 昭和52(オ)591 / 裁判年月日: 昭和53年3月23日 / 結論: 破棄差戻
口頭弁論終結にあたつて当事者が他に主張立証はない旨述べたことは、唯一の証拠方法を取り調べることを要しない特段の事情にはあたらない。
事件番号: 昭和35(オ)318 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
土地の貸借関係が賃貸借か使用貸借であるかが争点である事件において、貸主が同一人である係争土地の隣地の貸借関係が賃貸借であるからといつて、その故に直ちに係争土地の貸借関係を賃貸借と認定すべきではない。