原告が明渡を求める目的物件の表示を誤つて申し立てたため、裁判所が判決において目的物件の表示を誤つた場合において、右目的物件がもともと同一であることが記録上明らかであるときは、民訴法第一九四条を準用して、判決の更正をすることができると解するのが相当である。
判決の目的物件の表示に誤りがある場合において民訴法第一九四条が準用された事例
民訴法194条
判旨
当事者の申立ての誤りに起因して判決の目的物件の表示に誤りが生じた場合であっても、目的物件の同一性が認められるときは、民訴法257条1項(旧194条)を準用して判決を更正できる。
問題の所在(論点)
当事者の申立て自体の誤りに基づいて判決主文の目的物件の表示に誤りが生じた場合、民事訴訟法257条1項(旧194条)を準用して判決を更正することができるか。また、控訴裁判所が控訴棄却判決において第一審判決の誤謬を更正できるか。
規範
判決に計算違い、書き損じその他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は更正決定により判決を修正できる(民事訴訟法257条1項)。この「明白な誤り」には、裁判所の過失による場合だけでなく、当事者が申立てにおいて目的物件の表示を誤り、裁判所がそれをそのまま判決主文に引用したことで生じた表示の誤りも含まれる。ただし、この準用が認められるためには、申立ての当初から目的物件自体は同一であり、単にその表示に誤謬があることが記録上明らかであることを要する。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人ら(被告)に対し土地の明渡しを求めて提訴した。第一審判決は、被上告人の申立て通りの物件目録を引用して明渡しを命じた。しかし、その目録の表示は実際の目的物件の一部を正確に特定できておらず、表示上の誤りがあった。控訴審において、原審はこれが判決の更正を要する事態であると判断し、第一審判決の主文にある物件表示を正しい範囲(図面で囲まれた77.053平方メートル)に訂正(更正)した上で、控訴を棄却した。上告人は、この訂正は判決の更正の範囲を超え、違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件では、第一審判決の物件表示の誤りは被上告人の申立ての誤りに起因するものであり、裁判所の意思と表現の間に不一致はない。しかし、記録によれば、被上告人が当初から明渡しを求めていた目的物件自体は同一であり、単にその表示方法を誤ったに過ぎないことが明らかである。このような場合、実質的な判断内容に変更を加えるものではないため、同条の準用による更正が認められる。また、控訴裁判所が事案の終局的解決として控訴棄却を選択する場合であっても、その理由中で誤謬を指摘し、主文において第一審判決を更正することは許容される。
結論
当事者の申立ての誤りに起因する表示の不備であっても、物件の同一性が認められる限り、民訴法257条1項の準用による判決の更正は適法である。したがって、原審が第一審判決を更正した判断に違法はない。
実務上の射程
判決更正の範囲を、裁判所側のミスに限定せず、当事者の申立ての瑕疵に起因する場合まで広げた重要な判例である。答案上は、判決の確定後に強制執行が困難となるような表示の不備が発覚した場面や、控訴審での主文の修正の可否が問われる場面で、判決の同一性を害さない範囲での「明白な誤り」の解釈として引用すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)294 / 裁判年月日: 昭和30年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の保存登記において所在地の地番の表示に誤記があっても、当該建物につきなされた登記と認め得る限り、その保存登記は有効である。また、有効な登記であればこそ、更正登記により当初から更正後の内容で有効な登記が存在したものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人は、目的建物の所有権保存登記を備えていた。…
事件番号: 昭和34(オ)610 / 裁判年月日: 昭和37年5月24日 / 結論: 棄却
建物の所有権保存登記の表示欄の記載を誤り「a町b番のc、家屋番号d番」と記載されかつ本屋と附属建物とをとり違えて記載されたところ、その後更正登記がなされ「a町e番、b番のc、家屋番号d番」と記載しかつ本屋と附属建物とを入れ替えて記載され、両者の表示欄を全体として観察すれば、実質的に同一性を表示しているものと認められる場…
事件番号: 昭和36(オ)912 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
昭和二〇年一〇月頃権利金として四、〇〇〇円を支払い当該八〇坪を賃借した旨の主張に対し、昭和二一年九月頃権利金として一、〇〇〇円を支払い当該八〇坪を賃借したとの認定をしても、当事者の主張の範囲を逸脱した認定とはいえない。
事件番号: 昭和34(オ)1144 / 裁判年月日: 昭和35年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決理由の齟齬(旧民訴法395条1項6号、現行312条2項6号)とは、重要な事項について理由に食い違いがある場合を指し、単なる証拠の取捨に関する理由の不十分や不明瞭はこれに含まれない。また、同一文書を別個の証拠と誤認した瑕疵があっても、それが判決の結論に影響を及ぼさない場合には、上告理由には当たら…