判旨
建物の保存登記において所在地の地番の表示に誤記があっても、当該建物につきなされた登記と認め得る限り、その保存登記は有効である。また、有効な登記であればこそ、更正登記により当初から更正後の内容で有効な登記が存在したものとみなされる。
問題の所在(論点)
建物の所在地(地番)の表示に誤記がある保存登記について、当該建物に関する登記として有効といえるか。また、その後に更正登記がなされた場合の効力はどうなるか。
規範
不動産登記の有効性は、登記が実体的な権利関係と合致しているか、および登記の記載から対象不動産を特定できるかによって判断される。登記の記載事項の一部(建物の所在地の地番等)に誤りがある場合であっても、その登記が当該不動産を公示するものとして社会通念上認め得る場合には、その登記は有効である。また、更正登記がなされた場合には、当初から更正された内容の有効な登記が存在していたものと解される。
重要事実
上告人は、目的建物の所有権保存登記を備えていた。しかし、当該保存登記には、建物の所在地の地番の表示において誤記が含まれていた。その後、この誤記について更正登記がなされた。この登記の有効性(対抗力の有無)が争点となった。
あてはめ
本件保存登記には、建物の所在地の地番表示に誤記が存在する。しかし、原審が確定した事実関係によれば、その誤記にかかわらず、当該登記は本件建物についてなされたものと客観的に認められる。したがって、地番の誤記は登記の有効性を左右する致命的な瑕疵とはならず、本件保存登記は有効である。このように有効な登記であることを前提とすれば、後に誤記が更正されることにより、当初から更正後の正しい表示で有効な登記が存在したと評価されることになる。
結論
本件保存登記は有効であり、地番の誤記を更正したことにより、当初より更正後の内容で有効な登記が存在したものと認められる。
事件番号: 昭和34(オ)610 / 裁判年月日: 昭和37年5月24日 / 結論: 棄却
建物の所有権保存登記の表示欄の記載を誤り「a町b番のc、家屋番号d番」と記載されかつ本屋と附属建物とをとり違えて記載されたところ、その後更正登記がなされ「a町e番、b番のc、家屋番号d番」と記載しかつ本屋と附属建物とを入れ替えて記載され、両者の表示欄を全体として観察すれば、実質的に同一性を表示しているものと認められる場…
実務上の射程
登記の同一性・特定性が認められる範囲内での誤記(表示の更正の範囲内)であれば、対抗力を維持できることを示した。不動産特定の一部に誤りがある場合の対抗力の有無を論ずる際の規範として、物権変動の対抗要件(民法177条)の文脈で活用できる。ただし、第三者が現れる前の更正か、あるいは第三者が誤認する余地がないほどの特定性があるかが実務上の焦点となる。
事件番号: 昭和44(オ)1030 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
賃借権の設定された土地の上の建物についてなされた登記が、錯誤または遺漏により、建物所在地番の表示において実際と多少相違していても、建物の種類、構造、床面積等の記載とあいまち、その登記の表示全体において、当該建物の同一性を認識できる程度の軽微な誤りであり、ことにたやすく更正登記ができるような場合には、建物保護に関する法律…
事件番号: 昭和34(オ)1237 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
某町a番地の土地が同番のb、c等に分筆され、その旨の登記を経た後、a番のb、cの両土地を賃借した借地人が、両土地上に建築した建物につき、所在地番を旧番地たるa番と表示して、所有権保存登記をしたときは、右登記をもつて、a番のb、cの借地権を第三者に対抗することはできない。
事件番号: 昭和30(オ)94 / 裁判年月日: 昭和31年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約に基づき土地の占有権原を主張する場合、対象物件が契約当初の目的物件に含まれているか、あるいは建物の敷地として客観的に付随している必要がある。また、賃貸人による使用の承諾が認められない限り、不法占有としての責任を免れない。 第1 事案の概要:上告人は、係争宅地について土地賃貸借契約または家…
事件番号: 昭和33(オ)664 / 裁判年月日: 昭和34年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物収去土地明渡請求において、収去すべき建物部分が上告人の所有地に跨る部分を除外して判示されているなど、執行が可能な程度に収去範囲が特定されていれば、判決に違法はない。 第1 事案の概要:被上告人が上告人に対し、不法占有を理由として建物の収去及び土地の明渡を求めた事案。第一審判決と原判決(二審)と…