建物の所有権保存登記の表示欄の記載を誤り「a町b番のc、家屋番号d番」と記載されかつ本屋と附属建物とをとり違えて記載されたところ、その後更正登記がなされ「a町e番、b番のc、家屋番号d番」と記載しかつ本屋と附属建物とを入れ替えて記載され、両者の表示欄を全体として観察すれば、実質的に同一性を表示しているものと認められる場合には、右保存登記は、右登記の頭初に遡つて、建物保護法第一条第一項の建物の登記としての効力を有する。
建物所在の地番等の表示を誤つた所有権保存登記に建物保護法上の登記の効力があるとされた事例
建物保護法1条1項
判旨
建物の表示に関する更正登記がなされた場合、更正前後の表示を全体として観察して実質的な同一性が認められる限り、当該更正登記は当初に遡って有効なものと解される。
問題の所在(論点)
表示に関する登記に錯誤がある場合において、後になされた更正登記が当初の登記時に遡って効力を有するか。また、本屋と附属建物の表示が入れ替わっている場合に、実質的同一性を肯定できるか。
規範
表示の錯誤について更正登記がなされた場合、更正前後の各表示を全体として観察し、その建物の実質的な同一性を表示しているものと認められるときは、更正登記により当初の登記の時点に遡って有効な表示に変更されたものと解する。
重要事実
本件建物の昭和18年の保存登記(旧登記)では、地番が「川口市a町f丁目b番のc」と記載されていた。その後、昭和31年に更正登記がなされ、地番が「同町e番、b番のc」と改められた。この更正に際し、本屋と附属建物の表示が入れ替わる形となっていたが、建物としての実体は同一であった。
事件番号: 昭和28(オ)294 / 裁判年月日: 昭和30年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の保存登記において所在地の地番の表示に誤記があっても、当該建物につきなされた登記と認め得る限り、その保存登記は有効である。また、有効な登記であればこそ、更正登記により当初から更正後の内容で有効な登記が存在したものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人は、目的建物の所有権保存登記を備えていた。…
あてはめ
本件では、更正登記によって本屋と附属建物の表示が入れ替わっているものの、表示欄全体を総合的に観察すれば、本件建物の実質的な同一性を表示しているものと認められる。したがって、旧登記の地番表示における錯誤は、更正登記によって有効に是正されたと判断される。
結論
本件建物の保存登記は、更正登記によって当初に遡って有効なものとなり、保存登記としての効力を保有する。
実務上の射程
不動産登記の表示の更正における「同一性」の判断基準を示す。本屋と附属建物の表示の入れ替わりがあっても、全体として実体を指し示しているといえれば遡及的効力を認めることができる。物権変動の対抗要件としての登記の有効性を論じる際の基礎となる。
事件番号: 昭和34(オ)1237 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
某町a番地の土地が同番のb、c等に分筆され、その旨の登記を経た後、a番のb、cの両土地を賃借した借地人が、両土地上に建築した建物につき、所在地番を旧番地たるa番と表示して、所有権保存登記をしたときは、右登記をもつて、a番のb、cの借地権を第三者に対抗することはできない。
事件番号: 昭和37(オ)250 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
借地上に現存する甲建物が登記簿上借地人の所有として表示された乙建物と構造坪数の点で著しく異なる場合でも、甲建物が乙建物の一部である等両建物間の関係について原審が確定したような事情(原判決理由参照)があるときは、甲建物は、「建物保護ニ関スル法律」第一条にいう「登記シタル建物」にあたると解すべきである。
事件番号: 昭和44(オ)1030 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
賃借権の設定された土地の上の建物についてなされた登記が、錯誤または遺漏により、建物所在地番の表示において実際と多少相違していても、建物の種類、構造、床面積等の記載とあいまち、その登記の表示全体において、当該建物の同一性を認識できる程度の軽微な誤りであり、ことにたやすく更正登記ができるような場合には、建物保護に関する法律…
事件番号: 昭和42(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和43年2月23日 / 結論: 棄却
原告が明渡を求める目的物件の表示を誤つて申し立てたため、裁判所が判決において目的物件の表示を誤つた場合において、右目的物件がもともと同一であることが記録上明らかであるときは、民訴法第一九四条を準用して、判決の更正をすることができると解するのが相当である。