某町a番地の土地が同番のb、c等に分筆され、その旨の登記を経た後、a番のb、cの両土地を賃借した借地人が、両土地上に建築した建物につき、所在地番を旧番地たるa番と表示して、所有権保存登記をしたときは、右登記をもつて、a番のb、cの借地権を第三者に対抗することはできない。
二筆の賃借地上に跨在する建物につき、所在の地番として、分筆前の旧番号を表示してされた所有権保存登記は、建物保護法第一条第一項所定の対抗力を有するか
建物保護法1条1項,不動産登記法(昭和35年法律14号による改正前)50条1項,不動産登記法(昭和35年法律14号による改正前)36条1号
判旨
借地上の建物の登記に表示された所在地の地番が、分筆前の旧地番のまま存置されている場合、建物保護に関する法律1条(現行借地借家法10条1項)所定の対抗力は認められない。
問題の所在(論点)
建物の登記簿上の所在地の表示が、土地の分筆・合筆等に伴う旧地番のままとなっている場合、当該登記は建物保護に関する法律1条(現行借地借家法10条1項)にいう「登記した建物」として土地賃借権の対抗力を有するか。
規範
建物所有を目的とする土地賃借権の対抗力が認められるためには、当該土地上に登記されている建物が存在することを要する。この登記は、第三者が当該土地について賃借権の制限があることを容易に認識できる程度に、実際の建物の所在地と合致している必要がある。したがって、登記上の建物所在地の地番が現行の実際の地番と異なり、旧地番のままである場合には、特段の事情のない限り、当該登記をもって土地賃借権を第三者に対抗することはできない。
重要事実
上告人は、本件土地のうち「a番のb」および「a番のc」の土地上に居宅を所有していた。しかし、当該建物の所有権保存登記においては、その当初から所在地が「a番」(旧地番)の建物として表示されていた。その後、土地所有権を取得した被上告人に対し、上告人は当該登記をもって土地賃借権(借地権)の対抗力を主張した。
事件番号: 昭和37(オ)250 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
借地上に現存する甲建物が登記簿上借地人の所有として表示された乙建物と構造坪数の点で著しく異なる場合でも、甲建物が乙建物の一部である等両建物間の関係について原審が確定したような事情(原判決理由参照)があるときは、甲建物は、「建物保護ニ関スル法律」第一条にいう「登記シタル建物」にあたると解すべきである。
あてはめ
本件建物の登記は、本来表示されるべき現行の地番である「a番のb」ではなく、旧地番である「a番」のまま表示されている。このような地番の不一致がある場合、第三者が登記簿を閲覧しても、当該登記が「a番のb」の土地上にある建物のものと直ちに識別することは困難である。したがって、この登記は実際の建物の所在を正確に公示しているとはいえず、土地賃借権の公示としての効力を有しないと解される。
結論
上告人は、旧地番による建物の登記をもって、本件土地の譲受人である被上告人に対し、土地賃借権を対抗することはできない。
実務上の射程
借地借家法10条1項(旧建物保護法1条)の対抗力が認められるための登記の同一性に関するリーディングケースである。答案上は、地番の誤記や不一致がある場合に「公示としての機能を果たしているか」という視点から対抗力を否定する論拠として引用する。ただし、表示のわずかな相違にすぎず、登記全体から建物の同一性が容易に識別できる場合には対抗力が維持される余地がある点に留意が必要である。
事件番号: 昭和44(オ)317 / 裁判年月日: 昭和44年12月23日 / 結論: 破棄差戻
建物保護に関する法律一条は、登記した建物をもつて土地賃借権の登記に代用する趣旨であり、当該建物の登記に所在の地番として記載されている土地についてのみ、同条による賃借権の対抗力を生ずる。
事件番号: 昭和38(オ)1407 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
請求権保全の仮登記でも、これに基づく本登記がなされたときは、仮登記以後におけるこれと相容れない中間処分の効力を否定する効果を有するものと解すべきであり、所有権移転請求権保全の仮登記以後における所論賃借権の設定も右にいう仮登記と相容れない中間処分たるを失わない(昭和三三年(オ)第八七一号同三六年六月二九日第一小法廷判決、…
事件番号: 昭和44(オ)1030 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
賃借権の設定された土地の上の建物についてなされた登記が、錯誤または遺漏により、建物所在地番の表示において実際と多少相違していても、建物の種類、構造、床面積等の記載とあいまち、その登記の表示全体において、当該建物の同一性を認識できる程度の軽微な誤りであり、ことにたやすく更正登記ができるような場合には、建物保護に関する法律…
事件番号: 昭和28(オ)334 / 裁判年月日: 昭和29年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物保護に関する法律1条(現借地借家法10条1項)による建物の登記は、土地賃借権の対抗力を認めるものであり、賃貸人の承諾(民法612条1項)を不要とする効果までは認められない。 第1 事案の概要:土地賃借人Dは、本件宅地の賃借権を上告人に対して譲渡したが、その際、賃貸人である被上告人の承諾を得てい…