建物保護に関する法律一条は、登記した建物をもつて土地賃借権の登記に代用する趣旨であり、当該建物の登記に所在の地番として記載されている土地についてのみ、同条による賃借権の対抗力を生ずる。
建物保護に関する法律一条の趣旨
建物保護に関する法律1条
判旨
建物保護に関する法律1条(借地借家法10条1項)による対抗力は、建物の登記に敷地の表示として記載されている土地の範囲に限られ、記載のない隣接地には及ばない。
問題の所在(論点)
登記された建物による借地権の対抗力(建物保護法1条、現借地借家法10条1項)が、建物の登記に所在地番として記載されていない敷地部分についても及ぶか。
規範
建物保護に関する法律1条(現借地借家法10条1項)は、登記された建物をもって土地賃借権の登記に代用する趣旨である。したがって、第三者が建物の登記を見た際に、どの範囲の土地賃借権に対抗力が生じているかを認識し得る必要があるため、対抗力の及ぶ範囲は、当該建物の登記に敷地として記載されている土地(更正登記が許される範囲の表示を含む)に限られる。
重要事実
賃借人甲は、賃貸人乙から相隣接する8筆の土地を借地し、その上に建物を所有していた。建物の登記簿上、当初は1筆のみが敷地として記載されていたが、後に現状に合わせるべく8筆を敷地とする更正登記がなされた。しかし、その更正後の登記においても、実際には8筆のうち2筆(d番のe、f番のe)が所在地番として記載されていなかった。原審は、建物がこれら8筆全部に跨がって存在していることを理由に、8筆全てについて対抗力を認めたため、上告された。
事件番号: 昭和34(オ)1237 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
某町a番地の土地が同番のb、c等に分筆され、その旨の登記を経た後、a番のb、cの両土地を賃借した借地人が、両土地上に建築した建物につき、所在地番を旧番地たるa番と表示して、所有権保存登記をしたときは、右登記をもつて、a番のb、cの借地権を第三者に対抗することはできない。
あてはめ
本件建物の登記には、敷地である8筆のうち、特定の2筆(d番のe、f番のe)が所在地番として記載されていない。第三者が登記を確認した際、記載のない土地についてまで賃借権の存在を知ることは困難である。更正登記の許される範囲であれば適正な表示とみなせるものの、記載自体を欠く土地については、建物が物理的に跨がって存在していたとしても、建物登記による代用機能は果たされない。したがって、当該2筆について賃借権の対抗力を認めることはできない。
結論
建物の登記に所在地番として記載されていない土地については、たとえそれが実際の敷地であっても、建物保護法1条による対抗力を主張することはできない。
実務上の射程
借地権の対抗力具備において、建物登記の所在地番が敷地の範囲を画定する基準となることを示した。一筆の土地の一部が敷地である場合の表示の程度が問題となる事案や、複数の筆に跨がる建物の登記の正確性が問われる答案において、公示の原則から導かれる限定解釈として活用すべき射程を持つ。
事件番号: 昭和47(オ)1008 / 裁判年月日: 昭和50年2月13日 / 結論: 棄却
借地人が借地上に自己を所有者と記載した表示の登記のある建物を所有する場合は、建物保護に関する法律一条にいう登記したる建物を有するときにあたる。
事件番号: 昭和28(オ)334 / 裁判年月日: 昭和29年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物保護に関する法律1条(現借地借家法10条1項)による建物の登記は、土地賃借権の対抗力を認めるものであり、賃貸人の承諾(民法612条1項)を不要とする効果までは認められない。 第1 事案の概要:土地賃借人Dは、本件宅地の賃借権を上告人に対して譲渡したが、その際、賃貸人である被上告人の承諾を得てい…
事件番号: 昭和37(オ)250 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
借地上に現存する甲建物が登記簿上借地人の所有として表示された乙建物と構造坪数の点で著しく異なる場合でも、甲建物が乙建物の一部である等両建物間の関係について原審が確定したような事情(原判決理由参照)があるときは、甲建物は、「建物保護ニ関スル法律」第一条にいう「登記シタル建物」にあたると解すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)1106 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
宅地およびその上の建物を甲が所有していたところ、抵当権の実行により乙が建物を競落して、法定地上権を取得し(その後に宅地につき土地区画整理法によつていわゆる現地換地による仮換地の指定がなされた)、次いで丙が地上権とともに建物を譲受け、さらにその後丁が甲から宅地を譲受けてそれぞれ所有権移転登記を経由した場合においては、丙が…