借地人が借地上に自己を所有者と記載した表示の登記のある建物を所有する場合は、建物保護に関する法律一条にいう登記したる建物を有するときにあたる。
借地人が借地上に表示の登記のある建物を所有する場合と建物保護に関する法律一条
建物保護に関する法律1条,不動産登記法91条
判旨
建物保護法1条(借地借家法10条1項)にいう「登記した建物」には、権利の登記のみならず、借地権者が自己を所有者として記載した表示の登記も含まれ、相続人が被相続人名義でなした表示の登記も有効な対抗力を有する。
問題の所在(論点)
建物保護法1条にいう「登記シタル建物」に、建物の「表示の登記」が含まれるか。また、相続人が被相続人名義でなした表示の登記に借地権の対抗力が認められるか。
規範
建物保護法1条(現借地借家法10条1項)の趣旨は、地上建物の登記名義により、その者が借地権を有することを第三者が推知し得る点にある。土地利用の保護と取引安全の調和という同条の法意に照らせば、建物についてなされるべき登記は権利の登記に限られず、借地権者が自己を所有者と記載した「表示の登記」であっても足りる。また、相続により建物を取得した借地権者が、被相続人を所有者と記載してなした表示の登記も、同様に有効な対抗力を有する。
重要事実
借地権者である被上告人は、建物の所有権を相続により取得した。その後、当該建物について被相続人を所有者とする「表示の登記」のみがなされた状態で、上告人が当該土地を取得した。上告人は、借地権について対抗要件(建物保護法1条)が具備されていないとして、建物の収去及び土地の明け渡しを求めた。
事件番号: 昭和37(オ)18 / 裁判年月日: 昭和41年4月27日 / 結論: その他
土地賃借人は、該土地上に自己と氏を同じくしかつ同居する未成年の長男名義で保存登記をした建物を所有していても、その後該土地の所有権を取得した第三者に対し、「建物保護ニ関スル法律」第一条により、該土地の賃借権をもって対抗することができないものと解すべきである。
あてはめ
本件における建物の表示の登記は、権利の登記ではないものの、第三者が当該建物の所有者および借地権の存在を推知し得る公示機能を果たしている。被相続人名義の登記であっても、相続という一般的承継関係に基づきなされたものであれば、借地権の存在を外部から認識させるに足りる。したがって、借地権者の保護という同条の趣旨に合致し、有効な対抗要件として認められるべきである。また、本件請求自体も権利の濫用に当たると解される。
結論
表示の登記であっても建物保護法1条の登記に含まれるため、被上告人は借地権の対抗力を有する。したがって、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
借地借家法10条1項の「登記」の範囲に関する重要判例である。表示の登記であっても、また相続等で被相続人名義であっても、実質的に公示の役割を果たしていれば対抗力を認めるという実質的判断を示している。答案上は、登記の正確性よりも「第三者が借地権の存在を推知できるか」という公示の趣旨から論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和37(オ)250 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
借地上に現存する甲建物が登記簿上借地人の所有として表示された乙建物と構造坪数の点で著しく異なる場合でも、甲建物が乙建物の一部である等両建物間の関係について原審が確定したような事情(原判決理由参照)があるときは、甲建物は、「建物保護ニ関スル法律」第一条にいう「登記シタル建物」にあたると解すべきである。
事件番号: 昭和50(オ)268 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: 破棄差戻
土地賃借人は、借地上に子の名義で登記をした建物を所有していても、その後その土地の所有権を取得した第三者に対し、建物保護に関する法律一条により、その土地の賃借権をもつて対抗することができない。
事件番号: 昭和34(オ)1106 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
宅地およびその上の建物を甲が所有していたところ、抵当権の実行により乙が建物を競落して、法定地上権を取得し(その後に宅地につき土地区画整理法によつていわゆる現地換地による仮換地の指定がなされた)、次いで丙が地上権とともに建物を譲受け、さらにその後丁が甲から宅地を譲受けてそれぞれ所有権移転登記を経由した場合においては、丙が…
事件番号: 昭和44(オ)317 / 裁判年月日: 昭和44年12月23日 / 結論: 破棄差戻
建物保護に関する法律一条は、登記した建物をもつて土地賃借権の登記に代用する趣旨であり、当該建物の登記に所在の地番として記載されている土地についてのみ、同条による賃借権の対抗力を生ずる。