判旨
判決書における訴訟代理人の氏名の記載は、必要的記載事項(民事訴訟法191条等)ではないため、その誤記や欠落が直ちに訴訟手続の無効をもたらすものではない。
問題の所在(論点)
判決書における訴訟代理人の氏名の表示は、必要的記載事項であるか。また、その表示の誤りにより、直ちに訴訟手続が無権代理人によってなされたと解されるか。
規範
判決書の記載事項に関し、訴訟代理人の氏名は民事訴訟法(旧法191条)の定める必要的記載事項には該当しない。したがって、判決書上の表示に瑕疵があったとしても、それが直ちに無権代理人による訴訟手続を意味するものではなく、また、当該瑕疵が更正手続により是正されている場合には、上告理由とはなり得ない。
重要事実
上告人は、原判決における訴訟代理人の表示に不備があることを理由に、原審における訴訟手続が訴訟代理権のない者によってなされたものであると主張して上告した。しかし、当該判決書上の表示については、その後に更正手続がなされていた。
あてはめ
民事訴訟法191条(現行法253条参照)において、判決書の必要的記載事項として代理人の氏名は列挙されていない。本件において、原判決の表示に不備があったとしても、そのことのみから直ちに訴訟代理権の欠缺という実体的瑕疵を推認することはできない。さらに、本件では記録上、当該表示が更正手続によって適正に修正されていることが認められる。したがって、表示の不備を理由とする訴訟手続の違法をいう主張は、前提を欠くものである。
結論
判決書における訴訟代理人の表示の不備は、必要的記載事項の欠欠には当たらず、更正されている以上、判決の効力に影響を及ぼさない。上告棄却。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和36年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審における訴訟代理人の権限は、特段の事情がない限り、同一の事件について上訴審における代理権をも含むものと解される。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)において被上告人を代理した弁護士に代理権がなかった旨を主張して上告した。しかし、記録上、当該弁護士に対しては第一審段階で訴訟代理委任状が…
判決書の形式的記載事項の誤り(表示の誤り)と、実体的な訴訟能力・代理権の存否を区別する。軽微な表示上の瑕疵は、更正の対象となり得るにとどまり、訴訟手続全体の無効を導くものではないことを示す際に有用である。
事件番号: 昭和28(オ)294 / 裁判年月日: 昭和30年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の保存登記において所在地の地番の表示に誤記があっても、当該建物につきなされた登記と認め得る限り、その保存登記は有効である。また、有効な登記であればこそ、更正登記により当初から更正後の内容で有効な登記が存在したものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人は、目的建物の所有権保存登記を備えていた。…
事件番号: 昭和30(オ)991 / 裁判年月日: 昭和32年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】口頭弁論期日において実際に行われた弁論に即し、これに合致する不動文字(あらかじめ印刷された文字)の用紙を使用して口頭弁論調書を作成することは、適法である。 第1 事案の概要:上告人は、原審の口頭弁論調書の記載部分が不動文字(あらかじめ印刷された文字)で作成されていることを捉え、これが適法な作成方式…
事件番号: 昭和32(オ)659 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…
事件番号: 昭和30(オ)39 / 裁判年月日: 昭和31年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審で提出された準備書面の内容が判決の事実摘示から漏れていたとしても、控訴審で異議を述べず、第一審判決の事実摘示通りに陳述した場合には、当該事項は控訴審の判断対象とならない。 第1 事案の概要:上告人は、第一審においてある準備書面を提出し陳述したが、第一審判決の「事実」欄にはその記載が漏れていた…