判旨
口頭弁論期日において実際に行われた弁論に即し、これに合致する不動文字(あらかじめ印刷された文字)の用紙を使用して口頭弁論調書を作成することは、適法である。
問題の所在(論点)
口頭弁論調書の作成において、実際に行われた弁論の内容に合致する不動文字が印刷された用紙を使用することが、民事訴訟法上の調書作成方式として許容されるか。
規範
口頭弁論調書は、期日における弁論の経過を公証するものであり、その作成にあたっては実際に行われた弁論の内容と合致していることが必要である。もっとも、実際に行われた弁論の内容が、あらかじめ用紙に印刷された不動文字の内容と一致する場合には、当該用紙を使用して調書を作成しても、当事者の手続的権利を害するものではないため、その作成方式は適法である。
重要事実
上告人は、原審の口頭弁論調書の記載部分が不動文字(あらかじめ印刷された文字)で作成されていることを捉え、これが適法な作成方式に反し無効であると主張した。また、裁判長の署名捺印が所定の時期までになされておらず方式を欠くとも主張して、原判決の破棄を求めた。
あてはめ
本件における口頭弁論調書は、記録によれば不動文字で印刷された部分が存在する。しかし、その内容は口頭弁論期日において実際に行われた弁論に即したものであり、実態と合致している。このような作成方法は、当事者の権利を不当に害するものではなく、方式違背には当たらない。また、署名捺印の欠如という点についても、記録上、裁判長の署名捺印が存在することが確認でき、方式を欠くとは認められない。
結論
不動文字を使用した口頭弁論調書の作成は、実際の弁論内容と合致している限り適法であり、原審の手続に違法はない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)303 / 裁判年月日: 昭和31年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書における訴訟代理人の氏名の記載は、必要的記載事項(民事訴訟法191条等)ではないため、その誤記や欠落が直ちに訴訟手続の無効をもたらすものではない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決における訴訟代理人の表示に不備があることを理由に、原審における訴訟手続が訴訟代理権のない者によってなされたもの…
判決効の客観的範囲や控訴審における事後審的性格を支える「調書の公証力」に関する論点に関連する。実務上、定型的な手続の記録に不動文字を用いることは許容されるが、個別具体的な主張立証については正確な記載が求められる点に留意すべきである。
事件番号: 昭和30(オ)551 / 裁判年月日: 昭和30年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠申請に対し、採用しない旨の決定を口頭弁論調書に明記せず、証拠調べを行わないまま弁論を終結させた場合であっても、訴訟の指揮及び経過から取調の要なしとして暗黙に排斥したものと認められるときは適法である。 第1 事案の概要:上告人は、原審において証拠申請を行ったが、口頭弁論調書にはこの申請を…
事件番号: 昭和36(オ)134 / 裁判年月日: 昭和36年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】口頭弁論調書に主張を撤回する旨の陳述が記載されている場合、その記載が誤りである旨の立証がなされない限り、当該主張の撤回があったものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人らは、原審(控訴審)の第2回口頭弁論において、代理人を通じて「従来の地上権に基づく主張は当審において撤回する」旨の準備書面を陳述…
事件番号: 昭和28(オ)294 / 裁判年月日: 昭和30年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の保存登記において所在地の地番の表示に誤記があっても、当該建物につきなされた登記と認め得る限り、その保存登記は有効である。また、有効な登記であればこそ、更正登記により当初から更正後の内容で有効な登記が存在したものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人は、目的建物の所有権保存登記を備えていた。…
事件番号: 昭和31(オ)345 / 裁判年月日: 昭和32年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】文書が公文書として真正に成立したものと推定されるためには、その方式及び趣旨により、公務員が職務上作成したものと認められることを要する。文書の形式や記載内容から見て、公務員が職務上作成したと認められないものは、民事訴訟法上の真正の推定(形式的証拠力の推定)を受けない。 第1 事案の概要:上告人は、提…