判旨
文書が公文書として真正に成立したものと推定されるためには、その方式及び趣旨により、公務員が職務上作成したものと認められることを要する。文書の形式や記載内容から見て、公務員が職務上作成したと認められないものは、民事訴訟法上の真正の推定(形式的証拠力の推定)を受けない。
問題の所在(論点)
民事訴訟法第228条2項(旧323条)に基づく公文書の真正の推定(形式的証拠力の推定)が生じるための要件、および文書の形式的不備が当該推定に及ぼす影響が問題となる。
規範
文書が真正に成立した公文書と推定されるためには、その方式および趣旨により、官吏その他の公務員が職務上作成したものと認められることを要する(民訴法228条2項参照)。したがって、文書の形式や記載の趣旨から見て、公務員がその権限に基づいて正規に作成したと認め難い欠点がある場合には、真正の推定を受ける要件を欠き、形式的証拠力は認められない。
重要事実
上告人は、提出した書証(乙9号ないし12号、15号)について、公務員が職務上作成した公文書であるから真正な成立が推定されるべきであると主張した。しかし、原審は、当該書面の形式および記載内容に不自然な点があることを指摘。特に、東京都長官名下の印影の大きさが、当時の法令(明治31年閣令5号等)で定められた正当な印影のサイズと合致しない等の欠点を理由に、正当な権限ある公務員により作成されたものとは認められないとして、真正の推定を否定した。
あてはめ
本件書証は、公務員が職務上作成したものと外形的に認められる必要がある。しかし、乙15号証等に含まれる「東京都長官」の印影は、当時の閣令が定める親任官(勅任官)の印章サイズと異なっていた。このような形式上の不備や記載内容の不自然さは、公務員が権限に基づき正規に作成したという外観を損なうものである。したがって、当該文書は「その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したもの」とは認められず、法定の推定を受ける前提を欠いているといえる。
結論
文書の形式や内容に不備があり、公務員が職務上作成したものと認められない以上、真正の推定は働かない。原審が証拠力を排斥した判断に採証法則違反はない。
事件番号: 昭和35(オ)461 / 裁判年月日: 昭和36年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】登記申請行為は、国家機関たる登記所に対してなされる公法上の行為であって、私法上の意思表示ではないため、民法上の表見代理規定等の直接の適用はない。 第1 事案の概要:上告人らが、本件建物の所有権移転等に関する登記申請行為について、それが私法上の意思表示に該当するか、あるいは代理権の有無等が争点となる…
実務上の射程
公文書の形式的証拠力を争う際、相手方が提示した文書の「方式(作成名義、印影、書式)」や「趣旨(内容の合理性)」の不備を具体的に指摘することで、228条2項の推定を阻止する論法として活用できる。特に印影の規格外などは決定的な事実認定の要素となり得る。
事件番号: 昭和35(オ)53 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法1条3項の権利濫用について、契約解除権の行使が権利の濫用にあたると解すべき根拠となる事実が認められない場合には、当該解除は有効である。原審が確定した事実関係の範囲内では、解除権の行使を不当とする事情がなく、権利濫用には当たらないとした判断を維持した。 第1 事案の概要:本件は契約の解除権行使の…
事件番号: 昭和31(オ)465 / 裁判年月日: 昭和32年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物について登記が存在しない場合には、「建物保護ニ関スル法律」1条による対抗力は認められない。また、建物の収去を求める請求が権利の乱用とされるか否かは、事案の具体的経緯に照らして慎重に判断されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は土地を賃借しその上に建物を所有していたが、当該建物につい…
事件番号: 昭和39(オ)848 / 裁判年月日: 昭和40年10月5日 / 結論: 棄却
供託書の記載を司法書士に依頼するに際し、法律知識のとぼしい普通の人間は、法律専門職である司法書士に対し供託原因の記載内容まで指示することは通常期待できない、という経験則はない。
事件番号: 昭和30(オ)645 / 裁判年月日: 昭和31年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物明渡請求が権利の濫用に当たるか否かは、請求側の正当な目的の有無に加え、相手方側の事情を総合的に斟酌し、社会通念上是認できない程度のものといえるかによって判断すべきである。 第1 事案の概要:被上告人(権利者)が上告人(占有者)に対し、本件建物の明渡しを求めて提訴した。上告人は、当該明渡請求が権…