判旨
登記申請行為は、国家機関たる登記所に対してなされる公法上の行為であって、私法上の意思表示ではないため、民法上の表見代理規定等の直接の適用はない。
問題の所在(論点)
登記申請行為は私法上の意思表示に該当するか。また、公法上の行為に対して私法上の代理に関する規定(表見代理等)や法理を直接適用できるか。
規範
登記申請行為は、国家機関である登記所に対して行われる「公法上の行為」である。したがって、それは私法上の権利義務の発生・変更・消滅を直接の目的とする「私法上の意思表示」とは性質を異にする。
重要事実
上告人らが、本件建物の所有権移転等に関する登記申請行為について、それが私法上の意思表示に該当するか、あるいは代理権の有無等が争点となる事案において、登記申請行為の法的性質を争った。原審は証拠に基づき、当該行為を公法上の行為と認定した。
あてはめ
本件における登記申請行為は、登記所という国家機関に対して行われる手続的行為である。これは建物所有権移転という私法上の法律効果を目的とする意思表示そのものではなく、あくまで登記手続を求める公法上の行為と解される。したがって、私法上の法律効果の発生を前提とする意思表示に関する法理をそのまま適用することはできない。
結論
登記申請行為は公法上の行為であり、私法上の意思表示ではない。よって、私法上の意思表示を前提とする上告人の主張は採用できない。
実務上の射程
公法上の行為に民法の表見代理(110条等)が適用されるかが問題となる場面で、本判決は「原則として適用を否定する」根拠となる。ただし、後の判例(最判昭46.6.3等)により、登記申請という公法上の権限を「基本代理権」として私法上の行為が行われた場合には、110条の類推適用を認める余地が示されている点に留意が必要である。
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【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…