委任契約に基づく委任事務の処理が、委任者の利益であると同時に受任者の利益でもある場合においても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等やむをえない事由があるときは、委任者は民法第六五一条に則り委任契約を解除することができる。
委任契約に基づく委任事務の処理が受任者の利益でもある場合と右契約の解除事由
民法651条
判旨
委任が受任者の利益をも目的とする場合であっても、受任者に著しく不誠実な行動があるなど「やむをえない事由」があるときは、委任者は民法651条に基づき委任契約を解除できる。
問題の所在(論点)
受任者の利益をも目的とする委任契約において、委任者による解除(民法651条)が認められるための要件が問題となる。
規範
委任は当事者双方の対人的信用関係を基礎とする契約である。そのため、委任事務の処理が委任者の利益であると同時に受任者の利益でもある場合(いわゆる「受任者の利益をも目的とする委任」)であっても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等、対人的信用関係を破壊するような「やむをえない事由」があるときは、委任者は民法651条により契約を解除することができる。
重要事実
債権者であるD商事の代表者Fらは、債務者E建設の事業を継続させて債権回収を図るため、E建設から経営一切の委任を受け、請負工事を続行した。しかし、FらはE建設の乗用車を私物化し、さらにE建設の不動産を無断でD商事に移転させた。これにより他の債権者の足並みが乱れて債権回収が困難となり、最終的にE建設は不渡りを出すに至ったため、E建設は委任契約を解除した。
あてはめ
本件委任は債権回収を目的としており受任者の利益も含むが、Fらによる「車両の私物化」や「不動産の無断名義移転」という行為は、受任者として著しく不誠実な行動であるといえる。このような不信行為は、委任契約の基礎となる対人的信用関係を根本から破壊するものであり、委任契約を解除するに足りる「やむをえない事由」に該当すると評価される。
結論
E建設による委任契約の解除は有効である。
実務上の射程
受任者の利益をも目的とする委任は原則として解除できないとされる(通説)が、本判例は「やむをえない事由」がある場合の例外的な解除権を認めている。答案上は、解除の自由(651条1項)を制限しつつも、信頼関係が破壊された場合の救済策として本規範を提示するのが実務的である。
事件番号: 昭和39(オ)98 / 裁判年月日: 昭和40年12月17日 / 結論: 棄却
受任者が受任事務の処理について利益を有する委任契約であつても、やむをえない事由があるときは、委任者は契約を解除することができる。
事件番号: 昭和43(オ)1311 / 裁判年月日: 昭和48年12月20日 / 結論: 破棄差戻
一、社会保険診療報酬支払基金法による社会保険診療報酬支払基金は、保険者から診療報酬の請求に対する審査および支払に関する事務の委託を受けたときは、診療担当者に対し、みずから審査したところに従い、自己の名において診療報酬を支払う義務を負う。 二、国民健康保険法四五条五項により審査および支払に関する事務の委託を受けた国民健康…