診療担当者である医師の診療報酬支払担当機関に対する将来の診療報酬債権は、医師が通常の診療業務を継続し、かつ、その債権がそれほど遠くない将来において生ずるものである限り、始期と終期を特定して債権の範囲を確定することによつてこれを譲渡することができる。
診療担当者の診療報酬支払担当機関に対する将来の診療報酬債権の譲渡性
民法466条,健康保険法43条ノ9第5項,国民健康保険法45条5項,社会保険診療報酬支払基金法13条1項
判旨
将来発生すべき債権であっても、発生原因が確定しており発生が確実に予測しうるものであれば、始期と終期を特定して範囲を確定することで有効に譲渡できる。
問題の所在(論点)
発生原因が未だ発生していない将来債権を対象とする譲渡契約(将来債権譲渡)が認められるか。また、その有効性の要件(債権の特定性)をいかに解すべきか。
規範
将来発生する債権の譲渡について、①それほど遠い将来のものでなく、②現在すでに債権発生の原因が確定し、③その発生を確実に予測しうるものである場合には、始期と終期を特定してその権利の範囲を確定することにより、これを有効に譲渡することができる。
重要事実
医師Dは、信用組合に対し、将来支払を受けるべき約1年分の診療報酬債権を譲渡し、債務者である支払基金等に通知した。その後、Dの債権者Gが、当該期間内に含まれる数ヶ月分の診療報酬債権を差し押さえ、取立命令を得た。Gは、将来債権の譲渡は無効であるとして支払を求めた。
事件番号: 昭和43(オ)1311 / 裁判年月日: 昭和48年12月20日 / 結論: 破棄差戻
一、社会保険診療報酬支払基金法による社会保険診療報酬支払基金は、保険者から診療報酬の請求に対する審査および支払に関する事務の委託を受けたときは、診療担当者に対し、みずから審査したところに従い、自己の名において診療報酬を支払う義務を負う。 二、国民健康保険法四五条五項により審査および支払に関する事務の委託を受けた国民健康…
あてはめ
診療報酬債権は、現行医療保険制度下において毎月一括して支払われるものであり、通常の診療を継続する限り一定額以上の安定した発生が確実に期待できる。本件譲渡は、約1年後の将来までの分に限定されており(①)、原因が確定し(②)、発生も確実に予測できる(③)。したがって、期間による特定(始期・終期の指定)がなされている本件譲渡は有効である。先行する有効な譲渡がある以上、後の差押えは効力を奏しない。
結論
本件各債権譲渡は有効であり、債権譲渡通知後になされた差押・取立命令に基づく取立請求は認められない。
実務上の射程
本判決は将来債権譲渡の有効性を認めたリーディングケースである。答案上は、譲渡対象債権の「特定性」が問題となる場面で、本件規範を提示して期間や発生原因による特定の有無を論じる。なお、公序良俗違反(過度な拘束)の視点は、後の最判平11.1.29等で補充されているため、併せて留意する必要がある。
事件番号: 平成10(オ)331 / 裁判年月日: 平成13年11月27日 / 結論: 棄却
指名債権譲渡の予約についてされた確定日付のある証書による債務者に対する通知又は債務者の承諾をもって,当該予約の完結による債権譲渡の効力を第三者に対抗することはできない。
事件番号: 昭和42(オ)219 / 裁判年月日: 昭和43年9月20日 / 結論: 棄却
委任契約に基づく委任事務の処理が、委任者の利益であると同時に受任者の利益でもある場合においても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等やむをえない事由があるときは、委任者は民法第六五一条に則り委任契約を解除することができる。