給料債権に対して差押・取立命令を受けた従業員が勤務先を退職したのちにその勤務先に再雇傭されたが、再雇傭されるまでに六か月余を経過しているなどの事情のある場合には、再雇傭後の給料債権に対して右差押・取立命令の効力が及ぶとすることはできない。
給料債権に対して差押・取立命令を受けた従業員が勤務先を退職したのちにその勤務先に再雇傭された場合と再雇傭後の給料債権に対する右差押・取立命令の効力
民訴法598条,民訴法604条
判旨
給料債権の差押命令の効力は、債務者が一度退職し、相当期間経過後に再雇用された場合の再雇用後の給料債権には及ばない。
問題の所在(論点)
雇用契約に基づく給料債権を差し押さえた後、債務者が一度退職し、一定期間を経て再雇用された場合、当初の差押命令の効力が再雇用後の給料債権に及ぶか。
規範
継続的債権に対する差押えの効力は、原則として、その発生の基礎となる法律関係が継続している範囲で及ぶ。一度雇用契約が終了した場合、その後に締結された新たな雇用契約に基づく債権は、特段の事情がない限り、当初の差押命令の効力の範囲外となる。
重要事実
債権者である上告人は、債務者Dが被上告会社に対して有する給料等債権について、差押・取立命令を得た。その後、Dは被上告会社を一度退職したが、約6か月余の期間を経過した後に、再び同社に再雇用された。上告人は、この再雇用後の給料についても差押命令の効力が及ぶと主張した。
あてはめ
本件において、債務者Dは退職から再雇用までに6か月余という相当の期間を経過している。この事実からすれば、前の雇用関係と再雇用後の雇用関係との間には連続性が認められず、再雇用後の給料債権は、差押命令の対象となった当初の雇用契約に基づく債権とは別個の発生原因に基づくものと解される。したがって、当初の差押命令の効力が再雇用後の給料債権にまで拡張されることはない。
結論
再雇用後の給料債権に差押命令の効力は及ばないため、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
継続的債権の差押え(民執法151条)における効力の及ぶ範囲を画する。形式的な再雇用であっても、退職後の期間や再雇用の経緯から実質的に雇用関係が断絶していると評価される場合には、効力が遮断されることを示唆する。答案上は、債権の同一性の有無を判断する際の基準として活用すべきである。
事件番号: 昭和60(オ)977 / 裁判年月日: 昭和63年7月15日 / 結論: 棄却
抵当権者が物上代位権の行使として債務者の有する債権を差し押さえても、被差押債権の消滅時効は中断されない。
事件番号: 昭和39(行ツ)47 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 棄却
破産宣告後は、破産財団に属する財産に対し、財団債権である国税債権をもつて新たに国税徴収法による差押をすることはできない。
事件番号: 平成16(受)380 / 裁判年月日: 平成19年1月18日 / 結論: 破棄自判
定年前に退職する従業員に対して定年退職の扱いとし割増退職金を支給することなどを内容とする選択定年制が定められている場合において,従業員からの申出に対し使用者がこれを承認することによって上記選択定年制による退職の効果が生ずるものとされており,使用者が承認をするかどうかに関し就業規則等において特段の制限が設けられていないな…