定年前に退職する従業員に対して定年退職の扱いとし割増退職金を支給することなどを内容とする選択定年制が定められている場合において,従業員からの申出に対し使用者がこれを承認することによって上記選択定年制による退職の効果が生ずるものとされており,使用者が承認をするかどうかに関し就業規則等において特段の制限が設けられていないなど判示の事情の下では,上記選択定年制に基づき退職の申出をしたが承認のされなかった従業員については,上記選択定年制による退職の効果は生じない。
定年前に退職する従業員に対して定年退職の扱いとし割増退職金を支給することなどを内容とする選択定年制に基づき退職の申出をしたが承認のされなかった従業員について上記選択定年制による退職の効果が生じないとされた事例
民法第3編第2章第1節第1款 契約の成立,労働基準法第2章 労働契約,労働基準法89条3号,労働基準法89条3号の2
判旨
早期退職優遇制度への応募に対し、会社側が承認をしない場合でも、不承認に正当な理由がある限り、当該労働者に選択定年制に基づく退職の効果は発生しない。特に営業譲渡に際しての人員確保の必要性がある場合、全応募者一律の不承認であっても、裁量権の逸脱・濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
就業規則上、早期退職(選択定年制)の適用に会社の承認を要するとされている場合において、会社が事業譲渡に伴う人員確保を理由に一律に不承認とすることが、裁量権の逸脱・濫用として無効となるか。
規範
退職の申込みに対し会社の承認を要する旨の就業規則等の定めがある場合、その承認は会社の裁量に属する。もっとも、その裁量は無制限ではなく、制度の趣旨、退職希望者の被る不利益、会社側の運営上の必要性等を比較考量し、公序良俗等に反しない限りにおいて認められる。特に特定の事業の継続や譲渡に際して不可欠な人員を確保する必要がある場合、不承認とすることには合理的な理由が認められる。
重要事実
銀行であるYは、一定の年齢・勤続年数を満たす従業員が、定年前に退職を選択できる「選択定年制」を設けていた。同制度による退職には「人事部長の承認」を必要とする旨が定められていた。その後、Yは経営悪化に伴い営業譲渡を行うこととなり、譲渡先から一定数の人員確保を強く求められた。Yは、これ以上の人材流出を防ぐため、当時の応募者全員(Xらを含む)に対し一律に不承認とする方針を決定し、Xらの応募を不承認とした。Xらは、不承認は無効であり、選択定年制に基づき退職した地位にあることの確認等を求めて提訴した。
あてはめ
Yの選択定年制は、人事部長の承認を要件としており、退職の効力発生には会社側の承諾が必要な合意解約の性質を有する。Yは営業譲渡に際し、譲渡先から事業継続に必要な人員の維持を求められており、さらなる人材流出が営業譲渡そのものを危うくする客観的な状況にあった。このような経営上の必要性に鑑みれば、不承認とする理由には十分な合理性がある。全応募者を一律に不承認とした点についても、特定の者を選別する恣意性を排除する側面があり、直ちに不当とはいえない。したがって、本件不承認は裁量権の範囲内である。
結論
本件不承認は有効であり、Xらの選択定年制に基づく退職の効果は発生しない。よって、Xらの請求は棄却される。
実務上の射程
早期退職優遇制度の法的性質が「合意解約」型(会社の承諾が必要なもの)である場合、会社側に相当程度の判断の自由が認められることを示した事例である。答案上は、まず制度の法的性質を確定し、次に承諾拒絶に「業務上の必要性」という正当理由があるかを検討する枠組みで活用できる。ただし、特定の労働者を狙い撃ちした不承認などは別途、信義則違反等が問題となり得る点に注意が必要である。
事件番号: 平成29(受)1889 / 裁判年月日: 平成31年4月25日 / 結論: その他
使用者と労働組合との間の当該労働組合に所属する労働者の未払賃金に係る債権を放棄する旨の合意につき,当該労働組合が当該労働者を代理して当該合意をしたなど,その効果が当該労働者に帰属することを基礎付ける事情はうかがわれないという事実関係の下においては,これにより当該債権が放棄されたということはできない。
事件番号: 昭和34(オ)396 / 裁判年月日: 昭和35年7月21日 / 結論: 棄却
一 町村合併による新町の発足により旧町村の正式職員であつた者が新たに新町の職員として任命されたような場合には、条件附任用に関する地方公務員法第二二条の適用はない。 二 地方公務員法第二八条第一項第一号、第三号に該当するかどうかの判断は、任命権者の純然たる自由裁量に任された事項ではなく、同条の趣旨にそう一定の客観的標準に…