破産宣告後は、破産財団に属する財産に対し、財団債権である国税債権をもつて新たに国税徴収法による差押をすることはできない。
破産宣告後は破産財団に属する財産に対し新たに国税徴収法による差押をすることができるか
破産法47条2号,破産法71条,国税徴収法47条
判旨
破産宣告前に生じた国税債権であっても、破産宣告後は財団債権となり、破産手続外での新たな滞納処分は許されない。破産法が破産宣告前の滞納処分の続行のみを容認していることは、新たな処分の禁止を意味し、財団債権の弁済は破産管財人の合理的判断に委ねられるべきである。
問題の所在(論点)
破産宣告後において、財団債権である国税債権に基づき、破産財団に属する財産に対して新たに滞納処分(差押え)を行うことができるか。特に、破産宣告前の滞納処分の続行を認める規定が、新たな処分の禁止を包含しているか、また財団債権の「随時弁済」の性質が滞納処分を許容するかが問題となる。
規範
1. 破産宣告前の原因に基づく国税債権は、破産宣告後は財団債権となる。2. 破産法(旧法71条1項、現行43条2項参照)が破産宣告前の滞納処分の続行を妨げない旨を規定していることは、反面として、破産宣告後に新たに滞納処分をすることは許されないことを意味する。3. 財団債権は破産手続によらず随時弁済される(旧法49条、現行100条1項)が、その弁済は破産管財人の合理的判断に基づき適正迅速に行われるべきものであり、滞納処分による強制的な徴収を認める根拠にはならない。
重要事実
破産者は昭和28年に破産宣告を受けた。上告人(税務当局)は、破産宣告前の滞納国税について交付要求をしていたが、十分な納付がなかったため、昭和36年に破産管財人が管理していた預金債権(破産財団に属する財産)を差し押さえる滞納処分を行った。これに対し、破産管財人である被上告人らが、破産宣告後の新たな差押処分は違法であるとして、その取消しを求めた。
あてはめ
まず、破産法が宣告前の滞納処分の続行を特に規定している以上、反対解釈として新たな滞納処分は禁止されていると解される。次に、破産手続の本質は、管財人の広い裁量と責任の下で総債権者の公平な満足を図る包括的強制執行手続である。財団債権が随時弁済の対象であるとしても、それは管財人に対する直接の弁済請求を認めるに留まり、管財人の管理・処分権を侵害する個別的な滞納処分を許すものではない。したがって、本件のように宣告から数年後に管財人が管理する預金を差し押さえることは、管財人の職務遂行を妨げるものであり許されない。
結論
破産宣告後、新たに滞納処分を行うことは許されない。本件差押処分は違法であり、取消を免れない。
実務上の射程
財団債権であっても破産手続開始後は新たな滞納処分ができないとする「滞納処分の禁止」の原則を確立した重要判例である。答案上では、破産手続開始後の強制執行等の禁止(現行破産法42条・43条)の論証において、国税債権が財団債権として優先的地位にある場合でも、手続の円滑な進行と管財人の権限尊重の観点から、自力執行権が制限される根拠として引用すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)245 / 裁判年月日: 昭和35年7月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】滞納処分としての差押処分は租税賦課処分とは別個の行政処分であるが、その取消訴訟を提起するには原則として不服申立ての決定を経る必要があり、これに基づかない訴えは正当な事由がない限り不適法となる。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、滞納処分としてなされた差押処分の取消しを求めて提訴した。しかし、上告…
事件番号: 昭和46(行ツ)88 / 裁判年月日: 昭和49年7月22日 / 結論: 破棄自判
会社更生法一一九条所定の租税のうち徴収のために納税の告知を必要とする源泉徴収に係る所得税等に関しては、同条にいう納期限とは、各税法の規定により当該租税を納付すべき本来の期限(法定納期限)ではなく、納税の告知において指定された納付の期限(指定納期限)を指すものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(行ツ)6 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
破産宣告後の原因に基づく破産者の所得に課せられた所得税は、破産法第四七条第二号但書にいう「破産財団ニ関シテ生シタル」請求権にあたらない。