一、社会保険診療報酬支払基金法による社会保険診療報酬支払基金は、保険者から診療報酬の請求に対する審査および支払に関する事務の委託を受けたときは、診療担当者に対し、みずから審査したところに従い、自己の名において診療報酬を支払う義務を負う。 二、国民健康保険法四五条五項により審査および支払に関する事務の委託を受けた国民健康保険団体連合会は、療養取扱機関に対し、みずから審査したところに従い、自己の名において療養給付等の費用を支払う義務を負う。
一、社会保険診療報酬支払基金法による社会保険診療報酬支払基金の診療担当者に対する診療報酬支払義務 二、国民健康保険法四五条五項所定の権限を有する国民健康保険団体連合会の療養取扱機関に対する療養給付等の費用の支払義務
健康保険法43条ノ95項,国民健康保険法45条5項,社会保険診療報酬支払基金法13条,民訴法594条
判旨
社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険団体連合会は、保険者から診療報酬の審査・支払事務の委託を受けた場合、診療担当者に対し、自己の名において診療報酬を支払う公法上の義務を負う。
問題の所在(論点)
社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険団体連合会が、保険者から診療報酬の審査・支払事務の委託を受けた場合において、診療担当者に対して直接の支払義務を負うか。各機関と保険者との委託関係の法的性質および、各機関が負う義務の内容が問題となる。
規範
社会保険診療報酬支払基金(以下「基金」)が保険者から診療報酬の支払委託を受ける関係は公法上の契約関係であり、委託を受けた基金は、自ら審査したところに従い、診療担当者に対し自己の名において診療報酬を支払う法律上の義務を負う。また、国民健康保険団体連合会(以下「連合会」)についても、その公法人性及び権限の類似性から、基金法13条を類推適用し、保険者から委託を受けた場合には同様に直接の支払義務を負うと解するのが相当である。
重要事実
上告人(診療担当者)らが、保険者から診療報酬の審査および支払に関する事務を委託されている被上告人(基金および連合会)に対し、診療報酬の支払を求めた事案。原審は、基金および連合会はあくまで事務の委託を受けているに過ぎず、診療担当者に対して直接の支払義務を負うものではないとして、上告人らの請求を棄却したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
基金法によれば、基金は診療報酬の迅速適正な支払を目的とする法人であり、保険者から毎月多額の委託金を受ける一方、自ら審査を行い自己の名で支払を行う主要業務を担い、法定の場合には支払を一時差し止める権限(同法14条の4)も有している。連合会についても、国民健康保険法に基づき設立された公法人であり、審査委員会を置いて保険者の委託により審査・支払を行う権限を有しており、その実質は基金法13条に基づく基金の権限と極めて類似している。したがって、両機関は単なる代行者ではなく、公法上の契約に基づき、診療担当者に対して直接に公法上の支払義務を負う主体として評価される。
結論
被上告人(基金および連合会)は、保険者から委託を受けた範囲において、診療担当者に対し直接の診療報酬支払義務を負う。したがって、支払義務を否定した原判決には法令の解釈・適用を誤った違法がある。
実務上の射程
行政法における「公法上の契約」および「特殊法人の公法上の義務」が問題となる事案で活用できる。特に、法定の事務委託がなされている場合に、委託を受けた外郭団体が国民(診療機関等)に対して直接の義務を負うか否かの判断基準を示す。答案上は、組織の設置目的、権限の性質(自己の名での処理)、根拠法上の監督・義務規定を総合考慮する手法として参考になる。
事件番号: 昭和37(オ)212 / 裁判年月日: 昭和39年10月27日 / 結論: 棄却
債権の差押債権者が差押債権の取立命令をえた場合に、第三債務者は、差押前に債務者に対し取得した反対債権をもつて差し押えられた債権と相殺するには、右取立命令をえた差押債権者に対しても相殺の意思表示をすることができる。
事件番号: 昭和42(オ)219 / 裁判年月日: 昭和43年9月20日 / 結論: 棄却
委任契約に基づく委任事務の処理が、委任者の利益であると同時に受任者の利益でもある場合においても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等やむをえない事由があるときは、委任者は民法第六五一条に則り委任契約を解除することができる。
事件番号: 昭和37(オ)98 / 裁判年月日: 昭和38年10月22日 / 結論: 棄却
市有地の賃借権を譲渡するには、市条例所定の市長の承認を要するとしても、当事者がその承認を予期して右譲渡契約を締結することは違法でなく、その対価を取得しても、不法原因給付とはならない。