市有地の賃借権を譲渡するには、市条例所定の市長の承認を要するとしても、当事者がその承認を予期して右譲渡契約を締結することは違法でなく、その対価を取得しても、不法原因給付とはならない。
市有地の賃借権を市条例所定の市長の承認なしに譲渡する契約の効力。
民法612条,民法708条,昭和24.4.1大阪市条例19号「大阪市財産及び営造物条例」12条
判旨
公有地の賃借権譲渡に市長の承認を要する場合であっても、その承認を予期して譲渡契約を締結し、対価を受領することは、公序良俗に反するような違法性を有さず、不法原因給付(民法708条)には当たらない。
問題の所在(論点)
行政上の承認(市長の承認)が必要な賃借権の譲渡において、その承認を予期して締結された譲渡契約及び対価の授受が、民法708条の「不法な原因」に基づく給付に該当するか。
規範
行政上の承認等が必要な権利の譲渡であっても、将来の承認を前提として当事者間で譲渡契約を締結し、その対価を授受する行為は、当然に違法性を生ずるものではない。したがって、当該給付が公序良俗に反する等の特段の事情がない限り、不法原因給付(民法708条)の問題を生ずる余地はない。
重要事実
上告人は、被上告人から本件土地(大阪市が所有し、市長の承認が譲渡要件となっている公有地)の賃借権を他人に有償譲渡することの委託を受けた。上告人はこの委託に基づき賃借権譲渡の対価を取得したが、後にその対価の返還等を巡って争いが生じた際、当該契約が市長の承認を欠く違法なものであるとして、不法原因給付(民法708条)の成立を主張した。
あてはめ
本件における賃借権の譲渡は、大阪市長の承認を要するものであった。しかし、当事者間において将来の承認を予期して譲渡契約を締結することは、直ちに法秩序に反するものではなく、格別違法性を生ずべき筋合いはない。したがって、その契約に基づいて対価を取得したとしても、その給付の原因に強い反社会性や違法性は認められず、不法原因給付の規定を適用して返還を拒むことはできないと解される。
結論
市長の承認を要する賃借権譲渡の契約及び対価の授受は、不法原因給付には当たらず、有効な委託関係等に基づくものとして処理される。上告を棄却する。
実務上の射程
行政上の規制や承諾が必要な契約において、その承諾を前提とした内諾的な契約や対価の授受がなされた場合、直ちに「不法な原因」とはならないことを示した。司法試験においては、不法原因給付の成否が問題となる場面で、単なる法規違反のみでは足りず、公序良俗違反に匹敵するほどの違法性が必要であるという論証の文脈で活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)1198 / 裁判年月日: 昭和40年3月25日 / 結論: 棄却
選挙費用の法定額をこえて支出される関係にあることを知りながら候補者のために選挙費用の一部を立て替えた場合でも、右立替は不法原因給付にあたらないと解するのが相当である。