判旨
旧商法493条(会社法967条等に相当)の贈収賄罪における「不正の請託」に該当しない趣旨の依頼に基づいて交付された金員は、民法708条の不法原因給付に当たらない。
問題の所在(論点)
取締役等の贈収賄罪における「不正の請託」に該当しない依頼に基づく金員給付が、民法708条の「不法な原因」による給付として、返還請求が否定されるか。
規範
旧商法493条所定の罪(取締役等の贈収賄罪)が成立するには、構成要件として「不正の請託」を受けたことを要する。この「不正の請託」に該当しない依頼に伴って行われた金員交付については、直ちに公序良俗に反するものとはいえず、民法708条の不法原因給付には当たらない。
重要事実
被上告人(原告)が、上告人(被告:会社発起人等)に対し、一定の事務を依頼し(請託)、その対価として金員を交付した。上告人側は、この請託が旧商法493条の「不正の請託」に該当し、当該金員の給付は不法原因給付(民法708条)に当たるため返還義務がないと主張して争った。なお、具体的な請託の内容については判決文からは不明である。
あてはめ
旧商法493条は「不正の請託」を明文の構成要件としており、職務に関する請託が直ちに不法となるわけではない。本件において、被上告人が上告人に対して行った請託は、同条にいう「不正の請託」に当たらないと認定される。したがって、当該請託に関連してなされた金員の交付は、社会秩序に反する不法な原因に基づくものとは認められず、民法708条の適用を排除する原審の判断は正当である。
結論
本件金員の交付は民法708条の不法原因給付には当たらず、返還請求は認められる(上告棄却)。
実務上の射程
会社法上の贈収賄罪(967条等)と不法原因給付の成否が問題となる場面で活用できる。刑法上の収賄罪(不正の請託を要しない場合がある)とは異なり、会社法上の収賄罪は「不正の請託」が不可欠である。そのため、請託が「不正」とまで言えない場合には、民事上の不法原因給付の主張も退けられる可能性が高いことを示唆している。
事件番号: 昭和24(オ)9 / 裁判年月日: 昭和26年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の役員との間で合意された契約であっても、それが役員個人の資格で締結されたものと認められる場合には、当該法人を契約当事者とする契約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告会社との間で実施料に関する契約が成立したと主張し、当該契約に基づく反対債権の存在を主張した。これに対…