判旨
法人の役員との間で合意された契約であっても、それが役員個人の資格で締結されたものと認められる場合には、当該法人を契約当事者とする契約の成立を認めることはできない。
問題の所在(論点)
法人の重役との間になされた合意について、その契約当事者が役員個人か法人自体かが争われた場合、いかなる基準で判断されるか。また、法人のための契約成立を否定した原審の事実認定に違法があるか。
規範
契約の当事者確定において、相手方が法人の役員である場合であっても、当該合意が法人の代表者等としての地位に基づき法人のためになされたものか、あるいは個人の資格でなされたものかを、証拠に基づき客観的に判断すべきである。
重要事実
上告人は、被上告会社との間で実施料に関する契約が成立したと主張し、当該契約に基づく反対債権の存在を主張した。これに対し、事実認定において、被上告会社の重役であるE、F、Dの3名と上告人との間に実施料に関する合意があった事実は認められたものの、この合意は右3名が「個人の資格」で締結したものであった。
あてはめ
本件では、書証(甲第3、4号証)および証人Dの証言から合意の事実は認められるが、その性質は重役3名が個人として締結したものに留まる。提出された証拠を検討しても、当該契約が被上告会社との間に成立したと認めるべき客観的な事情は存在しない。したがって、原審が証拠の取捨選択に基づき「会社との契約ではない」と認定したことは、採証法則や経験則に反するものではない。
結論
上告人と被上告会社との間に契約は成立しておらず、反対債権の存在は否定される。上告棄却。
実務上の射程
法人の役員が関与する契約において、常に法人が当事者となるわけではないことを示す事例。実務上は、契約書等の形式的記載に加え、合意の目的や背景から「個人の資格」か「代表者としての資格」かを区別する重要性を示唆する。答案上は、当事者確定の局面での事実評価の基準として参照し得る。
事件番号: 昭和34(オ)571 / 裁判年月日: 昭和36年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】会社の目的の範囲内といえるかは、定款の記載から客観的・抽象的に判断すべきであり、特定の個人に対する手形裏書も、定款上の目的に照らし客観的に必要であり得る限り、会社の目的の範囲に属する。 第1 事案の概要:上告会社において、代表者(A2)が、特定の個人(A1)のために、A1が振り出した手形に対して会…