選挙費用の法定額をこえて支出される関係にあることを知りながら候補者のために選挙費用の一部を立て替えた場合でも、右立替は不法原因給付にあたらないと解するのが相当である。
法定額をこえる選挙費用の立替と不法原因給付の成否。
民法708条
判旨
選挙費用の法定限度額を超えて支出されることを了知してなされた金員の立替払であっても、直ちに公序良俗に反するものとはいえず、不法原因給付(民法708条)には該当しない。
問題の所在(論点)
選挙費用の法定制限額を超えて支出されることを知りながら行われた立替払が、民法708条の「不法原因給付」に該当し、返還請求が否定されるか。すなわち、当該立替払が民法90条の公序良俗に反するか。
規範
民法708条の「不法」とは、給付の原因となった行為が公序良俗(民法90条)に反することを指す。単に取締法規に抵触するのみでは足りず、社会的に許容されない程度の強烈な反社会性を備えている必要がある。
重要事実
上告人の選挙にあたり、被上告人は上告人の依頼を受け、昭和28年4月22日に選挙費用として40万円を選挙事務長に交付し、これを立て替えた。この40万円の支出は、公職選挙法等で定められた選挙費用の法定額を超えて支出される関係にあり、被上告人もその事実を了知していた。
あてはめ
被上告人が上告人の依頼により行った40万円の立替払は、たしかに法定の選挙費用額を超過する性質のものであり、被上告人もその事情を認識していた。しかし、選挙費用の超過支出を禁ずる規定は主として選挙の公正を確保するための取締法規であり、これに抵触する立替行為が直ちに民法90条の公序良俗に反し、その返還を拒絶しなければならないほどの反社会性を有するとまではいえない。
結論
本件立替払は不法原因給付にはあたらない。したがって、被上告人による立替金の返還請求は認められる。
実務上の射程
行政法規や取締法規に違反する行為であっても、直ちに公序良俗違反(90条)や不法原因給付(708条)に結びつくわけではないことを示す事案である。答案上は、公序良俗違反の有無を判断する際、「法規の趣旨」と「行為の反社会性の程度」を相関的に考慮する際の素材として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)1118 / 裁判年月日: 昭和40年10月5日 / 結論: 破棄差戻
債権者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の損害金を任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は、民法第四九一条により、残存元本に充当されるものと解すべきである。