第三債務者は、取立訴訟においては、債務名義の内容である執行債権の存在しないことが明白であつても、取立権の行使が権利の濫用または信義則違反であるとして争うことはできない。
執行債権の不存在が明白な場合と取立訴訟
民訴法623条,民法1条
判旨
執行手続と実体上の請求権の存否を争う手続は峻別されるべきであり、取立訴訟において執行債権の存否やその行使の違法性を争うことはできない。
問題の所在(論点)
取立訴訟において、第三債務者(または債務者)は債務名義に係る執行債権の実体上の消滅や、その行使が権利濫用・信義則違反にあたることを抗弁として主張できるか。
規範
民事執行における執行手続と、債務名義の実体上の請求権の存否等を争う手続とは峻別される。執行機関は債務名義の記載に従い機械的に執行を実施すべきであり、実体上の請求権の存否や権利濫用・信義則違反といった行使自体の違法性の有無は、通常の判決手続である請求異議の訴えによって審理されるべきである。したがって、執行手続の一環である取立訴訟において、債務名義の内容である執行債権の存否等を争うことは許されない。
重要事実
債権者が債務名義に基づき、債務者の第三債務者に対する債権を差し押さえ、取立権を行使するために取立訴訟を提起した。これに対し、原審は、執行債権(債務名義に係る請求権)が実体上消滅していることが客観的に明白な場合には、取立権の行使は許されないと判断し、取立訴訟の中で執行債権の実体的な存否を審査対象とした。これに対し、最高裁が職権をもって判断を示したものである。
あてはめ
民事訴訟法上の強制執行において、執行機関は債務名義があれば実体上の請求権を調査せずに執行すべき立場にある。債務者が実体上の不当な執行を争うには、執行手続から切り離された請求異議の訴えによるべきである。取立訴訟は執行手続の一部であるから、原判決が「客観的に明白な場合」に限定して実体上の判断を認めたことは、執行手続と実体争訟を峻別する法制度の趣旨に反し、誤りであるといえる。
結論
取立訴訟において、債務名義の内容である執行債権の存否や、その行使の違法性の有無を争うことはできない。
実務上の射程
本判決は、執行手続の形式性・迅速性を重視し、実体的な争点を執行手続(および取立訴訟)に持ち込ませない原則を明確にした。答案上は、取立訴訟において被告(第三債務者)が「執行債権は既に弁済されている」等の抗弁を提出した場合に、本判決を引用して「請求異議の訴えによって解決すべきであり、取立訴訟の審理対象とはならない」と論じる際に用いる。
事件番号: 平成11(受)1345 / 裁判年月日: 平成13年3月13日 / 結論: 棄却
抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできない。