不在者投票の違法管理が選挙の結果に異動を及ぼす虞れの認められる場合に、右不在者投票に関する選挙手続のみを無効とし、その範囲で選挙の一部無効による再選挙を行なうことは許されない。
不在者投票手続のみを無効としてその範囲で再選挙を行なうことの許否
公職選挙法49条,公職選挙法110条,公職選挙法205条
判旨
不在者投票の管理に関する違法は公職選挙法205条1項の「選挙の規定に違反」する場合に該当し、法律に定めのない単位での選挙の一部無効や再投票は認められない。
問題の所在(論点)
不在者投票の管理の違法が選挙無効原因(公職選挙法205条1項)となるか、また、特定の不在者投票のみを対象とする「一部無効」や再投票が認められるか。
規範
1. 不在者投票の管理に関する違法は、公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定に違反」する場合に該当し、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるときは選挙無効の原因となる。 2. 選挙の一部無効は、現行法上、複数の開票区がある選挙において開票区単位で認める規定(公職選挙法205条2項等)があるにすぎず、特定の投票(不在者投票等)のみを対象とした一部無効や再投票は認められない。
重要事実
本件選挙において、船上不在者投票(35票)の管理に違法があった。上告人らは、当該違法投票は特定可能であるから、当選無効原因として処理(公職選挙法209条の2の適用)すべきであり、仮に選挙無効とする場合でも、当該不在者投票に関する手続のみを無効として再投票を行う「一部無効」にとどめるべきであると主張した。
あてはめ
1. 不在者投票の手続的違法は、選挙の公正を確保するための規定に反するものであり、公職選挙法205条1項の「規定に違反」する場合に含まれるとするのが判例の確立した見解である。したがって、当選無効として処理すべきとの主張は採用できない。 2. 選挙の一部無効については、現行法は開票区単位での無効のみを定めており、投票用紙の種類や特定の選挙人を基準とした一部無効・再投票を可能とする規定は存在しない。明文の規定がない以上、解釈によってこれを認めることはできない。
結論
不在者投票の管理の違法は選挙無効原因となり、また法律の定めのない一部無効は認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
選挙訴訟において、違法事由が一部の投票(不在者投票等)に限定されている場合であっても、それが開票区単位でない限り、制度上「一部無効」という解決策は採り得ないことを示す射程を持つ。答案上は、公職選挙法205条1項の要件充足性を論じる際に、一部無効の可否とセットで検討する際の根拠となる。
事件番号: 昭和41(行ツ)73 / 裁判年月日: 昭和42年1月13日 / 結論: 棄却
町長が公職選挙法施行令第五二条第一項所定の証明権限により作成した不在事由証明書であることに信頼して不在者投票を許容したものであつても、右証明書自在に不在事由を確認するに足りない記載の不備その他の瑕疵の存するかぎり、右不在者投票請求の受理は違法たるを免れない。
事件番号: 昭和42(行ツ)20 / 裁判年月日: 昭和42年4月15日 / 結論: 棄却
選挙人、候補者、選挙運動者等の選挙の取締りないし罰則違反の行為は、公職選挙法第二〇五条第一項にいう選挙の規定違反にあたらないものと解するのが相当である。