判旨
公職選挙法205条1項に基づく選挙無効の原因は、原則として選挙の管理執行に関する規定の違反を指し、個々の選挙人による違法行為は直ちにこれに含まれない。
問題の所在(論点)
個々の選挙人による公職選挙法違反の行為が、同法205条1項に規定される選挙無効の原因となるか。
規範
公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定に違反することがある」とは、主として選挙の管理執行に関する規定の違反を指す。個々の選挙人による違法行為(同法236条、237条等)については、罰則の適用によって防止すべきものであり、それらの規定違反があるからといって直ちに選挙を無効とする趣旨ではない。
重要事実
判決文からは詳細な事案(特定の選挙の種類や具体的な違反行為の内容)は不明であるが、選挙人による個々の規定違反が行われた場合に、それが直ちに同法205条1項の選挙無効原因に該当するかが争点となった事案である。
あてはめ
選挙は選挙人の集合的行為であり、選挙管理委員会はその事務を管理するものである。同法が個々の選挙人の違法行為に対し罰則(236条、237条等)を設けているのは、個別的な処罰により公正を確保しようとする趣旨である。これに対し、選挙の管理執行に関する規定は選挙全体の自由公正に直接関わるものである。したがって、個別の選挙人による違反行為があったとしても、それが管理執行の規定違反を伴わない限り、直ちに選挙全体を無効とする事由には当たらないと解される。
結論
個々の選挙人の違反行為は直ちに選挙無効の原因とはならず、公職選挙法205条の解釈を誤ったものとはいえない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
選挙無効訴訟(205条1項)において、無効原因となる「規定違反」の範囲を限定的に解釈した重要な判断である。答案上では、管理執行側の瑕疵と、選挙人側の個別の不正(買収や投票の秘密侵害等)を区別し、後者については罰則による解決が予定されていることを論拠として、無効原因の存否を論ずる際に活用できる。
事件番号: 昭和51(行ツ)49 / 裁判年月日: 昭和51年9月30日 / 結論: 棄却
一、選挙管理委員会は、選挙運動用ポスターに記載された候補者の政見その他の主張に関係する文言については、その当否を審査し、その取消又は修正を命ずる権限を有しない。 二、市長選挙に際し、対立候補者である現職市長の行つている同和対策を批判する趣旨で「同和対策是か非か」という文言を選挙運動用ポスターに記載した候補者に対し、選挙…
事件番号: 昭和42(行ツ)20 / 裁判年月日: 昭和42年4月15日 / 結論: 棄却
選挙人、候補者、選挙運動者等の選挙の取締りないし罰則違反の行為は、公職選挙法第二〇五条第一項にいう選挙の規定違反にあたらないものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和54(行ツ)67 / 裁判年月日: 昭和55年2月14日 / 結論: 棄却
公職選挙法二〇五条一項にいわゆる選挙無効の要件としての「選挙の規定に違反するとき」とは、主として選挙管理の任にある機関による違反をいうものである。