不動産取引業者の仲介行為と成立した売買契約との間に因果関係がないとされた事例
判旨
不動産売買において、媒介業者が買希望者を案内し条件を告知したとしても、売主が当該希望者への売却を拒絶し、後に別途直接申込みをしてきた者と契約を締結した場合には、特段の事情がない限り、契約成立と業者の媒介行為との間に因果関係は認められない。
問題の所在(論点)
媒介業者が買希望者を案内する等の行為を行った後に、売主が当該希望者以外の者と直接契約を締結した場合、当該契約の成立が業者の媒介行為によるものと認められるか。媒介報酬請求の要件である「媒介と契約成立との間の因果関係」が問題となる。
規範
宅地建物取引業者が報酬請求権を行使するためには、媒介契約の存在に加え、業者の媒介行為によって売買契約が成立したという因果関係が必要である。単に物件情報の提供や案内を行ったにとどまり、契約の成立が売主独自の判断や別の経緯による場合には、媒介行為によるものとはいえない。
重要事実
不動産業者である上告人は、売主(D石油会社)から土地売却の斡旋依頼を受け、買希望者(E通運)を案内し条件を告知する仲介行為を行った。しかし、売主はE通運の資力に疑念を持ち、同社への売却を拒絶して自ら買主を探していた。その後、E通運から土地の売出しを知った被上告人が、直接売主に対して買入れを申し込み、売主は被上告人の傍系会社が取引先であった縁からこれに応じ、売買契約が成立した。
あてはめ
上告人は買希望者であるE通運に対して仲介行為を行ったが、売主側はE通運に対する売却の意思を明確に否定していた。本件売買契約は、被上告人が自ら売主に直接申し込んだことで成立しており、その決定打となったのは被上告人の傍系会社が売主の主要な取引先であるという独自の人的関係に基づく配慮であった。したがって、上告人の行った案内や条件告知は、最終的な売買契約の成立に対して寄与したとはいえず、因果関係は否定される。
結論
本件売買契約の成立は上告人の仲介行為によるものとはいえないため、上告人の報酬請求は認められない。
実務上の射程
媒介業者が関与した事案であっても、売主が一度拒絶し、その後に全く別個の経緯(特に人間関係や直接交渉)で契約に至った場合、因果関係を否定する有力な根拠となる。答案上は、報酬請求権の発生要件としての因果関係の有無を判断する際の、事実認定の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和47(オ)302 / 裁判年月日: 昭和48年1月25日 / 結論: 棄却
宅地建物取引業者甲が乙から土地買受の仲介依頼を受けて仲介に努めたが、土地所有者丙に売却の意思がないため売買契約が成立しなかつたところ、のちに丙の依頼した者の仲介で丙乙間に売買契約が成立した場合は、甲の仲介行為と右売買契約との間に因果関係がなく、乙において故意に右業者の仲介を排除したものでもなく、甲は、乙に対し報酬請求権…