宅地建物取引業者甲が乙から土地買受の仲介依頼を受けて仲介に努めたが、土地所有者丙に売却の意思がないため売買契約が成立しなかつたところ、のちに丙の依頼した者の仲介で丙乙間に売買契約が成立した場合は、甲の仲介行為と右売買契約との間に因果関係がなく、乙において故意に右業者の仲介を排除したものでもなく、甲は、乙に対し報酬請求権を有しない。
不動産買受仲介の依頼が解除されていない場合に宅地建物取引業者の報酬請求権が否定された事例
商法512条,商法550条1項,宅地建物取引業法46条
判旨
不動産売買の仲介を依頼された者が報酬を請求するためには、媒介行為と売買契約の成立との間に因果関係が必要であり、特段の報酬契約がなく、かつ故意に仲介を排除した等の事情がない限り、因果関係が欠ければ報酬請求権は発生しない。
問題の所在(論点)
媒介人の行った仲介行為と、その後に成立した本人間の売買契約との間に因果関係が認められない場合、媒介人は委託者に対して報酬を請求することができるか。
規範
商事媒介(商法550条1項参照)において、媒介人が報酬請求権を取得するためには、単に媒介行為を行うだけでなく、その行為と契約成立との間に因果関係が存在することを要する。ただし、特段の報酬契約(成否を問わず報酬を支払う旨の合意)が存在する場合や、委託者が媒介人の報酬支払を免れる目的で故意にその仲介を排除して直接契約を締結したといった信義則上の特段の事情がある場合は、この限りではない。
重要事実
上告人は、被上告人法人から本件土地の買入れ仲介を依頼された。一方、本件土地の所有者である被上告人Bは、当初土地を売却する意思も、上告人に仲介を依頼する意思も持っていなかった。その後、被上告人法人と被上告人Bとの間で本件土地の売買契約が成立したが、上告人の活動と当該契約成立との間には因果関係が認められず、また被上告人法人が上告人の仲介を故意に排除したという事実も認められなかった。上告人と被上告人法人の間には、契約成立の成否にかかわらず報酬を支払う旨の特段の合意も存在しなかった。
あてはめ
本件において、上告人が行った仲介行為は、結果として成立した被上告人両名間の売買契約に寄与しておらず、両者の間に因果関係は認められない。また、被上告人法人が上告人による報酬取得を不当に免れるために仲介を排除したという主観的態様も認められない。さらに、成否を問わず報酬を支払う旨の特段の合意も認められない以上、媒介報酬請求権の発生要件を充足しない。
結論
上告人は被上告人らに対し、本件売買契約の成立に基づく報酬請求権を有しない。
実務上の射程
媒介報酬の発生時期(成功報酬主義の原則)を前提とし、例外的に報酬が認められる「信義則による排除の禁止」の限界を示す。実務上は、媒介人の活動後に委託者が直接交渉(抜き行為)を行った場合に、因果関係の有無や排除の故意の有無を判断する基準として活用される。
事件番号: 昭和43(オ)17 / 裁判年月日: 昭和44年6月26日 / 結論: 棄却
宅地建物取引業者は、売主からの委託を受けず、かつ、売主のためにする意思を有しないでした売買の媒介については、売主に対し報酬請求権を有しない。