不動産取引の仲介に関し、仲介人と依頼人との間で定められた報酬金額は、特段の事情がないかぎり、売買契約が成立し、その履行がされ、取引の目的が達成された場合について定められているものと解するのが相当である。
不動産取引仲介報酬金についての約定の解釈
民法648条
判旨
不動産仲介報酬は、原則として売買契約が成立し、その履行により取引の目的が達成された場合に発生する。契約が成立しただけで履行に至らない場合に報酬全額を請求するには、特段の事情の立証を要する。
問題の所在(論点)
仲介報酬支払の合意がある場合において、売買契約が成立したものの履行がなされず取引の目的が達成されていないとき、仲介業者は当然に報酬全額を請求できるか。約定の趣旨と報酬請求権の発生時期が問題となる。
規範
仲介による報酬金は、原則として売買契約が成立し、その履行がされ、取引の目的が達成された場合に発生するものと解すべきである。ただし、①仲介人が宅地建物取引業者であり、②依頼者の責に帰すべき事由により契約が履行されなかったときでも報酬を請求しうる旨の約定がある等の「特段の事情」がある場合には、例外的に全額の請求が認められる。
重要事実
上告人は、被上告人(仲介業者)の仲介により、訴外Dから不動産を買い受ける契約を締結した。その際、上告人と被上告人の間では、売買契約成立と同時に報酬金100万円を支払う旨の合意がなされた。しかし、その後売買契約の履行は完了せず、取引の目的は達成されなかった。被上告人は報酬金のうち未払分60万円の支払を求めて提訴した。
あてはめ
本件では、売買契約成立と同時に報酬を支払う旨の約定が存在する。しかし、一般に仲介報酬は取引の目的達成の対価である。そうであれば、単に契約が成立した事実のみをもって直ちに報酬全額の発生を認めることはできない。本件において、履行未了にもかかわらず報酬が発生するといえるためには、依頼者の帰責性による不履行でも報酬を支払うといった特段の事情の有無を検討する必要がある。原審は、かかる特段の事情を認定することなく、契約成立の事実のみから全額の請求権を認めており、審理不尽の違法がある。
結論
原判決を破棄し、特段の事情の有無を審理させるため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
仲介報酬の「成功報酬」的性格を強調する判例である。答案上は、仲介契約に基づく報酬請求権の要件として、単なる「契約成立」だけでなく「履行・目的達成」が必要であることを原則論として示しつつ、特段の事情(特約や帰責性)の有無で結論を分ける枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和36(オ)1232 / 裁判年月日: 昭和39年7月16日 / 結論: 棄却
不動産取引仲介業者に対する不動産売買仲介の依頼が合意解除された後、当事者間の直接取引により右不動産を目的とする売買契約が成立した場合においても、右業者の仲介と当該売買契約成立との間に因果関係がなく、右解除も故意に右業者を除外する目的でなされたものでなく、かつ、右依頼に関して報酬金の特約もなかつたときに、右業者が報酬金を…