不動産取引仲介業者に対する不動産売買仲介の依頼が合意解除された後、当事者間の直接取引により右不動産を目的とする売買契約が成立した場合においても、右業者の仲介と当該売買契約成立との間に因果関係がなく、右解除も故意に右業者を除外する目的でなされたものでなく、かつ、右依頼に関して報酬金の特約もなかつたときに、右業者が報酬金を請求できるという一般取引観念が存するものとは認められない。
不動産売買仲介の依頼が合意解除された場合における不動産取引仲介業者の報酬請求権。
商法512条,商法550条1項,商法546条,宅地建物取引業法17条,民法648条3項,民法641条
判旨
仲介依頼が合意解除された後に、仲介人が与えた端緒により当事者間で直接売買契約が成立した場合であっても、仲介人の排除を目的とする不当な解除でなく、かつ売買成立との間に因果関係が認められないときは、報酬請求権は発生しない。
問題の所在(論点)
仲介契約が合意解除された後に、仲介人が関与した当事者間で直接取引が成立した場合において、仲介人は報酬請求権を行使できるか。特に、仲介行為と契約成立との間の因果関係および解除の態様が問題となる。
規範
仲介人が報酬を請求するためには、原則として仲介行為と売買契約成立との間に因果関係を要する。また、契約解除後に直接取引がなされた場合に報酬が認められるためには、(1)仲介人を故意に除外する目的での不当な解除が認められるか、または(2)特約の存在や社会の一般取引観念に照らして報酬支払を肯定すべき特段の事情(相当な因果関係)が必要である。
重要事実
不動産業者である上告人らは、被上告人らから不動産売買の仲介依頼を受けた。上告人らは売買の端緒を与えたものの、売買契約が締結される前に、上告人らと被上告人らとの間の仲介契約は合意解除された。その後、被上告人ら当事者間で直接交渉が行われ、売買契約が成立した。上告人らは、自らの仲介行為によって売買が成立したとして報酬の支払を求めた。
あてはめ
本件では、仲介契約の解除は被上告人らが上告人らを故意に除外する目的でなされたものではなく、正当な合意解除であると認められる。また、上告人らが売買の端緒を与えた事実は認められるものの、その程度の斡旋行為では本人間の直接取引による売買契約成立との間に因果関係があるとはいえない。さらに、報酬金についての特約も存在せず、仲介人が報酬を請求し得る社会の一般取引観念も認められない。
結論
仲介依頼の解除に不当な目的がなく、仲介行為と契約成立との間の因果関係も否定される本件においては、報酬請求権は認められない。
実務上の射程
仲介契約が終了した後の直接取引(いわゆる「中抜き」)に対する報酬請求の可否を判断する枠組みを提供する。実務上は、解除が「報酬支払を免れるための信義則違反」に当たるか、または「仲介人の行為が売買契約成立に決定的な影響を与えたか」という視点から、因果関係の有無を厳格に検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和46(オ)22 / 裁判年月日: 昭和50年12月26日 / 結論: その他
売主又は買主の一方からのみ仲介の委託を受けた宅地建物取引業者の仲介行為によつて契約が成立した場合において、当該業者が委託を受けない当事者に対し商法五一二条に基づく報酬請求権を取得するためには、客観的にみて右当事者のためにする意思をもつて仲介行為をしたものと認められることを要し、単に委託者のためにする仲介行為の反射的利益…