売主又は買主の一方からのみ仲介の委託を受けた宅地建物取引業者の仲介行為によつて契約が成立した場合において、当該業者が委託を受けない当事者に対し商法五一二条に基づく報酬請求権を取得するためには、客観的にみて右当事者のためにする意思をもつて仲介行為をしたものと認められることを要し、単に委託者のためにする仲介行為の反射的利益が委託をしない当事者に及ぶだけでは足りない。
売主又は買主の一方からのみ仲介の委託を受けた宅地建物取引業者の委託を受けない当事者に対する報酬請求権
商法512条,宅地建物取引業法46条
判旨
宅建業者が、仲介の委託を受けていない契約当事者に対して商法512条に基づく報酬を請求するには、単なる仲介の反射的利益ではなく、客観的にみて当該業者がその相手方の「ためにする意思」をもって仲介行為をしたと認められることを要する。
問題の所在(論点)
宅建業者が、直接の仲介委託関係にない契約当事者に対し、商法512条に基づき報酬を請求するための要件が問題となる。
規範
商法512条の報酬請求権が認められるためには、商人が「その営業の範囲内において他人のためにある行為をした」といえる必要がある。不動産仲介において委託を受けない相手方当事者に対し同条に基づく報酬を請求しうるためには、単に委託者のためにした行為の反射的利益が相手方に及ぶだけでは足りず、客観的にみて、当該業者が相手方当事者の「ためにする意思」をもって仲介行為をしたものと認められることを要する。
重要事実
宅建業者である被上告人B1は買主から、同じく宅建業者である被上告人B2は売主(上告人)から、それぞれ土地売買の仲介を委託された。B1とB2は共同して価格調整等の仲介行為を行ったが、交渉は難航し、一度は仲介委託が黙示的に解約された。その後、売主と買主が直接売買契約を締結したため、B1は直接の委託関係にない売主に対しても、仲介行為が成約に寄与したとして報酬を請求した。
あてはめ
本件において、B1とB2が共同して仲介を行い、その結果として取引が成立した事実は認められる。しかし、B1の行為は、本来の委託者である買主のためにする意思で行われたものであり、売主である上告人が得た利益は、その仲介行為の反射的利益にすぎない可能性がある。客観的にみて、B1が「売主(上告人)のためにする意思」をもって仲介行為をしたと認めるに足りる特段の事情が認定されない限り、商法512条の要件を満たすとはいえない。
結論
B1の上告人に対する報酬請求を認容した原判決には、商法512条の解釈の誤りがある。したがって、B1の請求に関する部分は破棄し、更なる審理のため差し戻すべきである。
実務上の射程
商法512条の「他人のために」の意義を、委託関係がない第三者との関係で厳格に解釈した。共同仲介において、一当事者の仲介業者が他方当事者に報酬を請求する場面では、単なる成約への寄与(反射的利益)ではなく、他方当事者のための独立した役務提供の意思と客観的事実が必要となる。
事件番号: 昭和36(オ)1232 / 裁判年月日: 昭和39年7月16日 / 結論: 棄却
不動産取引仲介業者に対する不動産売買仲介の依頼が合意解除された後、当事者間の直接取引により右不動産を目的とする売買契約が成立した場合においても、右業者の仲介と当該売買契約成立との間に因果関係がなく、右解除も故意に右業者を除外する目的でなされたものでなく、かつ、右依頼に関して報酬金の特約もなかつたときに、右業者が報酬金を…