土地の借主が無償使用に気がとがめ、盆暮に各一万円、その後各二万円づつの現金またはギフトチエツクを貸主に手渡していたが、右金員が貸主との約定によるものでなく、借主側で一方的のその額と支払時期とを定めたものであり、かつ、その金額は賃料額に比して些細なものであつたことが認められる等原判示事情(原判決理由参照)のもとにおいては、土地賃貸借契約の成立を認めることはできない。
土地賃貸借契約の存在が否定された事例
民法601条
判旨
金員の授受が賃貸借契約に基づく賃料の支払いか、単なる儀礼的贈与にすぎないかは、当事者の意思および諸般の事情を総合して判断される。
問題の所在(論点)
当事者間で授受された金員が、賃貸借契約の成立を基礎付ける「賃料」に該当するか、あるいは対価性のない「儀礼的贈物」にすぎないかが問題となった。
規範
特定の金員の授受が賃料(民法601条)としての性格を有するか否かは、形式的な名目にかかわらず、当事者間の合意内容、授受の経緯、金額の多寡、継続性等の諸般の事情に照らし、賃貸借の対価としての実質を有するかという観点から判断すべきである。
重要事実
上告人は被上告人に対し、目的物の使用に関連して一定の金員を支払った。上告人はこれが賃料の支払いであると主張したが、原審は証拠に基づき、当該金員は賃料としてではなく、単なる儀礼的贈物としてなされたものであると認定した。
事件番号: 昭和42(オ)1441 / 裁判年月日: 昭和43年6月6日 / 結論: 棄却
土地の不法占有を原因とする賃料額相当の損害金請求訴訟において、原告が右相当賃料額を一ケ月金一、〇九〇円と主張したのに対し、被告はいつたん右主張を認めたが、控訴審にいたつてこれを争い、その金額を一ケ月金一、〇八九円である旨主張する等判示のような事情が存在する場合には、右被告の主張の態度、変更後の陳述の内容その他本件に表わ…
あてはめ
原審が確定した事実関係によれば、当該金員の支払いは賃料としての性質を欠いており、単なる儀礼的贈物としての評価に留まる。最高裁も、証拠に照らしてこの原審の判断は是認できるとした。上告人が主張する事実は原審で認定されておらず、賃料であるとの主張は前提を欠く。
結論
本件金員の支払いは賃料とは認められず、儀礼的贈物である。したがって、賃貸借契約の成立を前提とする上告人の主張は採用されず、上告を棄却する。
実務上の射程
賃貸借の存否が争われる事案において、金員の授受がある場合でも、それが直ちに賃料として対価性を有するとは限らないことを示す。使用貸借か賃貸借かの区別や、黙示の賃貸借の成否を検討する際のあてはめにおいて、支払いの趣旨が「儀礼的」か「対価的」かを峻別する指標として機能する。
事件番号: 昭和40(オ)551 / 裁判年月日: 昭和42年3月16日 / 結論: 棄却
神社の境内地を終戦直後に区画整理施行日までを期限としてマーケツト建設のため賃貸した場合には、権利金代りの寄付をうけ、中途賃料の増額が行われたとしても借地法第九条にいう「一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合」にあたる。
事件番号: 昭和41(オ)1259 / 裁判年月日: 昭和42年2月24日 / 結論: 棄却
賃料が数次にわたつて値上げされたことや賃料が当該借地の固定資産税を上廻つていることは、一時使用のための賃貸借契約であると認定するについて妨げとなるものではない。
事件番号: 昭和47(オ)1191 / 裁判年月日: 昭和48年4月13日 / 結論: 棄却
土地に対する使用貸借上の借主の権利の時効取得が成立するためには、土地の継続的な使用収益という外形的事実が存在し、かつ、その使用収益が土地の借主としての権利の行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを必要とする。
事件番号: 昭和41(オ)315 / 裁判年月日: 昭和41年9月20日 / 結論: 棄却
適正賃料額による延滞賃料の合計額が八〇九九円であるのに、催告額が八三八二円四〇銭であつた場合には、右催告は適正の賃料額の限度において有効と解すべきである。