一審判決の送達をうけた弁護士事務所の事務員がてんかんの発作を起し、入院したため、訴訟代理人たる弁護士が一審判決正本を見たのが控訴期間経過後であつても控訴申立の追完は許されない。
訴訟行為の追完を認めなかつた事例
民訴法159条
判旨
不変期間を遵守できなかった原因が訴訟代理人の故意または過失にある場合は、民事訴訟法第97条1項(旧159条)にいう「当事者がその責めに帰することができない事由」には該当しない。
問題の所在(論点)
訴訟代理人の故意または過失によって不変期間を遵守できなかった場合、民事訴訟法第97条1項(旧159条)にいう「当事者がその責めに帰することができない事由」によるものとして、期間の追完が認められるか。
規範
民事訴訟法第97条1項(旧159条)の「当事者がその責めに帰することができない事由」とは、当事者本人のみならず、その訴訟代理人の故意または過失に起因する場合も含まれない。したがって、訴訟代理人がその責めに帰すべき事由により期間を遵守できなかった場合には、期間の追完は認められない。
重要事実
上告人の訴訟代理人の事務所に対し、判決正本が送達された。当該訴訟代理人が、事務所の事務員から実際にその判決正本を受領したのは、控訴期間が経過した後であった。上告人側は、代理人が現実に受領していなかった等の事情を理由に、不変期間の遵守が不可能であったとして期間の追完を申し立てた。
事件番号: 昭和37(オ)1400 / 裁判年月日: 昭和39年11月13日 / 結論: 棄却
ある契約が甲乙間に成立したものと主張して右契約の履行を求める訴が提起された場合に、裁判所が右契約は甲の代理人と乙との間になされたものと認定しても弁論主義に反するものとはいえない。
あてはめ
本件では、判決正本が訴訟代理人の事務所に送達された時点で有効な送達があったといえる。代理人が事務員から現実に受領したのが期間経過後であったとしても、それは事務所内の管理体制や代理人の注意義務の問題であり、代理人の責めに帰すべき事由がある。当事者本人の帰責性の有無にかかわらず、訴訟代理人の過失は当事者側の過失と同視されるため、救済の対象とはならない。
結論
訴訟代理人の過失により期間を徒過した本件においては、期間の追完は認められない。したがって、控訴を却下した原判決の判断は正当である。
実務上の射程
訴訟行為における代理人の過失が本人に帰属するという原則を確認した判例である。期間の追完が認められる「責めに帰することができない事由」は、天災地変や送達の不知など、当事者側が通常の注意を尽くしても避けられない客観的事情に限定されることを示唆しており、実務上のハードルは極めて高い。
事件番号: 昭和41(オ)1097 / 裁判年月日: 昭和42年6月6日 / 結論: 棄却
不動産の所有権が順次甲、乙、丙と譲渡された場合に、甲が乙に対し所有権移転登記をする意思で、登記申請書類を交付していたときは、甲の右登記申請意思は、丙が右書類を利用して甲から丙に直接所有権移転登記をすることを無効たらしめるものではない。
事件番号: 昭和50(オ)932 / 裁判年月日: 昭和51年4月8日 / 結論: 棄却
先順位受附の登記申請人が、後順位受附の登記申請に基づき不動産登記法四八条に違反してされた登記につき、同条違反だけを理由にその抹消登記手続を求めることは許されない。
事件番号: 昭和40(オ)944 / 裁判年月日: 昭和41年4月15日 / 結論: 棄却
民法第一六二条第二項にいう平穏の占有とは、占有者がその占有を取得し、または、保持するについて、暴行強迫などの違法強暴の行為を用いていない占有を指称するものであり、不動産所有者その他占有の不法を主張する者から、異議をうけ、不動産の返還、占有者名義の所有権移転登記の抹消手続方の請求があつても、これがため、その占有が平穏でな…
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。