家事審判に対する不服申立は抗告訴訟によるべきであるとして、家事審判法第七条、第一三条、第一四条の憲法第三二条違背をいう所論は、家事審判に対する上訴制度について立法政策上の意見を述べるに帰着し、右憲法の条規違背をいうに当らないと解される。
家事審判法第七条第一三条第一四と憲法第三二条
憲法32条,家事審判法7条,家事審判法13条,家事審判法14条
判旨
遺産分割に関する家事審判は、憲法32条および82条の規定する公開法廷における対審および判決を必要とせず、その本質は行政処分ではなく非訟事件の裁判である。家事審判に対する上訴制度等の設計は、裁判所の権限や審級に関する立法政策の範疇に属し、憲法違反の問題は生じない。
問題の所在(論点)
遺産分割等の家事審判手続において、公開法廷による対審および判決を要しないこと、ならびに審判の確定や上訴に関する制度設計が、憲法32条および82条に抵触しないか。また、家事審判を行政処分と解すべきか。
規範
遺産の分割に関する処分の審判は、非訟事件の裁判としての性質を有する。したがって、憲法82条が定める対審および判決の公開原則は適用されず、また、これを行政処分と解して抗告訴訟の対象とすべきものでもない。審判に対する不服申立て等の手続設計は、立法政策上の合理的な裁量に委ねられている。
重要事実
抗告人は、遺産分割に関する家事審判について、公開法廷での対審・判決を経ていないことや、審判が送達されなかったこと等を理由に、憲法32条(裁判を受ける権利)および82条(裁判の公開)に違反すると主張した。さらに、家事審判の本質は行政処分であるから、抗告訴訟による救済が認められない現行制度は違憲であると訴えて、特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和39(ク)114 / 裁判年月日: 昭和41年3月2日 / 結論: 棄却
一 家事審判法第九条第一項乙類第一〇号の遺産の分割に関する処分の審判は、憲法第三二条、第八二条に違反しない。 二 家庭裁判所は、遺産の分割に関する処分の審判の前提となる相続権、相続財産等の権利関係の存否を、右審判中で、審理判断することができる。
あてはめ
最高裁は、遺産分割審判を非訟事件の裁判と位置づける先行判例を引用し、公開法廷での対審・判決を要しないと判断した。抗告人が主張する「行政処分」という性質については独自の見解にすぎないと退け、非訟事件としての特質を重視した。さらに、即時抗告や確定に関する規定は、裁判所の権限や審級に関する立法政策の問題であり、憲法32条が保障する裁判を受ける権利を侵害するものではないとした。
結論
家事審判手続において公開対審等を要しないことは合憲である。また、家事審判は非訟事件の裁判であり、行政処分には当たらないため、特別抗告を棄却する。
実務上の射程
非訟事件(家事審判を含む)において、憲法82条の公開原則が及ばないことを示す基礎的な判例である。答案上は、手続的適正の保障(憲法31条、32条)が問題となる場面で、訴訟事件と非訟事件の区別(権利自体の存否確定か、後見的裁量による形成か)を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和59(ク)100 / 裁判年月日: 昭和59年10月4日 / 結論: 棄却
遺産の分割に関する処分の審判に対する抗告審の決定は、当事者の審尋を経ないでされても、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 昭和36(ク)419 / 裁判年月日: 昭和40年6月30日 / 結論: 棄却
一 家事審判法第九条第一項乙類第一号の夫婦の同居その他夫婦間の協力扶助に関する処分の審判についての規定は、憲法第三二条、第八二条に違反しない。 二 夫婦の同居義務等を前提とする審判が確定した場合でも右同居義務等自体については、別に訴を提起することを妨げるものではない。 (補足意見および意見がある。)
事件番号: 昭和59(ク)112 / 裁判年月日: 昭和59年12月20日 / 結論: 棄却
家事審判法九条一項乙類四号所定の子の監護に関する処分にかかる審判についての規定は、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 昭和32(し)57 / 裁判年月日: 昭和32年12月23日 / 結論: 棄却
所論は憲法八二条違反をいうけれども、本件における決定(付審判請求棄却決定に対する抗告を棄却する決定)の如きは同条にいわゆる「裁判の対審」に当らないことは当裁判所の判例(昭和二三年(つ)第二五号、同年一一月八日大法廷決定、集二巻一二号一四九八頁参照)の趣旨に徴し明らかであるから右違憲の主張はその前提を欠くものである。