遺産の分割に関する処分の審判に対する抗告審の決定は、当事者の審尋を経ないでされても、憲法三二条、八二条に違反しない。
遺産分割に関する処分の審判に対する抗告審の決定と憲法三二条、八二条
家事審判法9条1項乙類10号,民訴法419条,憲法32条,憲法82条
判旨
遺産分割に関する審判およびその抗告審の決定は、本質的に非訟事件の性質を有するものであるから、公開法廷における対審および判決の手続を経ないで行われたとしても、憲法32条および82条に違反しない。
問題の所在(論点)
遺産分割という私人の権利義務に深く関わる事件の審判およびその抗告審において、公開の法廷における対審や判決の手続を経ないことが、憲法32条および82条に違反しないか。
規範
憲法82条の規定する公開裁判の原則は、純然たる訴訟事件を対象とするものであり、本質的に非訟事件の性質を有する手続については適用されない。また、憲法32条は裁判を受ける権利を保障するものであって、具体的な審理の方法(公開対審の要否等)までを規定するものではない。
重要事実
抗告人は、家事審判法9条1項乙類10号(現行の家事事件手続法)に基づく遺産の分割に関する処分の審判、およびその抗告審の決定が、公開の法廷における対審または当事者の審尋を経ずになされたことを不服とし、憲法32条(裁判を受ける権利)および82条(裁判の公開)に違反するとして特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和39(ク)114 / 裁判年月日: 昭和41年3月2日 / 結論: 棄却
一 家事審判法第九条第一項乙類第一〇号の遺産の分割に関する処分の審判は、憲法第三二条、第八二条に違反しない。 二 家庭裁判所は、遺産の分割に関する処分の審判の前提となる相続権、相続財産等の権利関係の存否を、右審判中で、審理判断することができる。
あてはめ
遺産分割に関する処分の審判は、その性質が本質的に非訟事件に属する。非訟事件は、権利関係の存否を確定する訴訟事件とは異なり、裁判所の後見的な介入によって適切な状態を形成することを目的とする。したがって、公開法廷での対審・判決は憲法上必須ではない。抗告審の決定も同様に非訟事件としての性質を維持しているため、原審が公開の法廷における対審や審尋を経ずに裁判を行ったことは、憲法の要請に反するものではない。
結論
遺産分割の審判および抗告審において公開対審を経ないことは、憲法32条および82条に違反しないため、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、家庭裁判所における乙類事件(現行法の別表第二事件)の非訟的性質を再確認するものである。答案上では、司法権の概念や憲法82条の射程を論じる際、「純然たる訴訟事件」と「非訟事件」の区別の根拠として引用できる。遺産分割のような合目的的な裁量が要求される手続は、密行的な非訟手続によることが合憲的に許容されるという文脈で使用する。
事件番号: 昭和39(ク)265 / 裁判年月日: 昭和41年6月22日 / 結論: 棄却
家事審判に対する不服申立は抗告訴訟によるべきであるとして、家事審判法第七条、第一三条、第一四条の憲法第三二条違背をいう所論は、家事審判に対する上訴制度について立法政策上の意見を述べるに帰着し、右憲法の条規違背をいうに当らないと解される。
事件番号: 昭和59(ク)112 / 裁判年月日: 昭和59年12月20日 / 結論: 棄却
家事審判法九条一項乙類四号所定の子の監護に関する処分にかかる審判についての規定は、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 昭和57(ク)329 / 裁判年月日: 昭和59年3月22日 / 結論: 棄却
家事審判法九条一項乙類九号の推定相続人廃除に関する審判は、憲法八二条、三一条に違反しない。
事件番号: 昭和42(ク)358 / 裁判年月日: 昭和42年12月22日 / 結論: 棄却
競売開始決定に対する異議手続は競売手続を進行させるか否かを決定するものに外ならず、抵当権の存否それ自体について既判力を生ずるものではないから、公開法廷において審理しなくても、憲法第三二条、第八二条に反しない。