家事審判法九条一項乙類九号の推定相続人廃除に関する審判は、憲法八二条、三一条に違反しない。
家事審判法九条一項乙類九号の推定相続人廃除に関する処分の審判の合憲性
家事審判法9条1項乙類9号,民法892条,憲法31条,憲法82条
判旨
推定相続人の廃除請求手続は、実体法上の権利行使というより、諸般の事情を総合的に考察して廃除の相当性を判断する非訟事件としての性格を有する。したがって、同手続を公開の法廷における対審及び判決によらずに行うことは、憲法82条等に違反しない。
問題の所在(論点)
推定相続人の廃除請求手続が「純然たる訴訟事件」に該当し、憲法82条に基づき公開の法廷における対審及び判決を必要とするか。
規範
憲法82条が定める「対審及び判決」の公開の原則は、純然たる訴訟事件に適用される。これに対し、家庭裁判所が諸般の事情を総合的に考察して後見的見地から裁量的に判断を下す非訟事件(家事審判等)については、公開の法廷で行うことは必ずしも憲法上要求されない。
重要事実
抗告人は、推定相続人の廃除請求(民法892条)の手続において、公開の法廷による対審及び判決を経ずに審理・裁判が行われたことに対し、憲法31条(適正手続)および82条(裁判の公開)に違反するとして抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和54(ク)149 / 裁判年月日: 昭和55年7月10日 / 結論: 棄却
民法八九二条の推定相続人廃除の規定は、被相続人に対し実体法の相続人廃除権ないし廃除請求権を付与したものではなく、右推定相続人廃除請求の手続は、非訟事件たる性質を有する。
あてはめ
民法892条の廃除請求は、単に実体法上の権利を行使させるものではなく、形式的要件に該当する場合でも、被相続人の宥恕や相続人の改心等の事情を総合的に考察して廃除の相当性を判断するものである。また、民法894条が廃除の取消しを認めている点からも、本手続は流動的かつ後見的な判断を伴う。したがって、本手続は純然たる訴訟事件ではなく非訟事件としての性格を有するため、家事審判法(当時)に従い非公開の手続で行うことは合憲といえる。
結論
推定相続人廃除の手続を公開の法廷で行わないことは憲法31条、82条に違反しない。したがって、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
非訟事件(家事審判)の合憲性を基礎づける古典的な重要判例である。答案上では、憲法82条の射程を論じる際や、家事事件の特殊性(裁量的・後見的判断の必要性)から手続の非公開性を正当化する文脈で使用する。
事件番号: 昭和59(ク)100 / 裁判年月日: 昭和59年10月4日 / 結論: 棄却
遺産の分割に関する処分の審判に対する抗告審の決定は、当事者の審尋を経ないでされても、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 昭和59(ク)112 / 裁判年月日: 昭和59年12月20日 / 結論: 棄却
家事審判法九条一項乙類四号所定の子の監護に関する処分にかかる審判についての規定は、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 昭和42(ク)358 / 裁判年月日: 昭和42年12月22日 / 結論: 棄却
競売開始決定に対する異議手続は競売手続を進行させるか否かを決定するものに外ならず、抵当権の存否それ自体について既判力を生ずるものではないから、公開法廷において審理しなくても、憲法第三二条、第八二条に反しない。
事件番号: 昭和39(ク)114 / 裁判年月日: 昭和41年3月2日 / 結論: 棄却
一 家事審判法第九条第一項乙類第一〇号の遺産の分割に関する処分の審判は、憲法第三二条、第八二条に違反しない。 二 家庭裁判所は、遺産の分割に関する処分の審判の前提となる相続権、相続財産等の権利関係の存否を、右審判中で、審理判断することができる。