民法八九二条の推定相続人廃除の規定は、被相続人に対し実体法の相続人廃除権ないし廃除請求権を付与したものではなく、右推定相続人廃除請求の手続は、非訟事件たる性質を有する。
推定相続人廃除請求事件の性質
憲法32条,憲法82条,民法892条,家事審判法9条1項乙類9号
判旨
推定相続人の廃除請求手続は、被相続人の実体法上の権利行使ではなく、家庭裁判所が後見的立場から廃除の相当性を判断する非訟事件たる性質を有するものである。
問題の所在(論点)
推定相続人の廃除請求(民法892条)は、被相続人の実体法上の権利行使としての訴訟事件か、それとも家庭裁判所の後見的判断に委ねられた非訟事件か。
規範
民法892条は、被相続人に実体法上の廃除権を付与したものではなく、家庭裁判所に対し、親族共同体内の適正な秩序維持という後見的立場から、廃除事由の有無を審査・判断させる権限を与えたものである。したがって、当該手続は訴訟事件ではなく、非訟事件たる性質を有する。
重要事実
抗告人は、民法892条に基づく推定相続人の廃除請求について、これが被相続人の実体法上の権利(廃除権)の行使であると主張した。その上で、本来訴訟事件として扱われるべき権利関係を、家事審判法(当時)により審判事件(非訟事件)として扱うことは違憲であるとして抗告した。
事件番号: 昭和57(ク)329 / 裁判年月日: 昭和59年3月22日 / 結論: 棄却
家事審判法九条一項乙類九号の推定相続人廃除に関する審判は、憲法八二条、三一条に違反しない。
あてはめ
民法892条が定める廃除の制度は、被相続人の意思を起点としつつも、最終的には家庭裁判所がその相当性を具体的に審査・判断する仕組みを採っている。これは、特定の個人に形成権を付与するものではなく、公的機関が身分関係の適正を判断する非訟手続である。したがって、これを審判事件として扱う家事審判法の規定は、憲法が要求する訴訟手続の保障に反するものではない。
結論
推定相続人の廃除請求は非訟事件であり、家事審判法に基づき審判(現在は家事事件手続法による別表第一事件)として扱うことは適法かつ合憲である。
実務上の射程
廃除請求が非訟事件であるとの構成は、家庭裁判所の裁量を基礎づける。答案上は、遺留分否定という重大な効果に鑑み、形式的な欠格事由とは異なり、家庭裁判所の実質的な後見的判断が必要とされる文脈で引用すべきである。
事件番号: 平成14(許)2 / 裁判年月日: 平成14年7月12日 / 結論: 却下
遺言執行者が推定相続人の廃除を求める審判手続において,廃除を求められていない推定相続人が利害関係人として審判手続に参加した場合に,参加人は廃除の申立てを却下する審判に対して即時抗告をすることができない。
事件番号: 昭和32(マ)8 / 裁判年月日: 昭和32年5月1日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所のなした決定に対して異議を申し立てることは許されない。また、準再審の申し立てであっても、再審事由に該当しないことが明らかな場合は不適法として却下される。 第1 事案の概要:申立人は、最高裁判所が既になした決定に対して異議を申し立てた。当該申立ては形式的には「異議の申立て」とされていたが、…
事件番号: 昭和54(ク)430 / 裁判年月日: 昭和55年2月7日 / 結論: 棄却
特別家事審判規則二一条の審判に対し即時抗告による不服申立の方法を認めるかどうかは、立法政策の問題に帰着し、家事審覇法一四条及び右規則が憲法三二条に違反するかどうかの問題を生じない。
事件番号: 昭和47(ク)216 / 裁判年月日: 昭和47年9月7日 / 結論: 棄却
忌避を申し立てられた裁判官が退官したことを理由とし、忌避申立を利益がないとして却下した決定は、申立の実質的理由につき判断を示さなかつたからといつて、憲法三二条に違反するものではない。