家事審判法九条一項乙類四号所定の子の監護に関する処分にかかる審判についての規定は、憲法三二条、八二条に違反しない。
家事審判法九条一項乙類四号所定の子の監護に関する処分にかかる審判についての規定の合憲性
民法766条2項,家事審判法9条1項乙類4号,憲法32条,憲法82条
判旨
子の監護に関する処分の審判は、非訟事件の裁判としての性質を有するものであり、公開の法廷における対審及び判決によらずに行われても憲法32条、82条に違反しない。
問題の所在(論点)
子の監護に関する処分の審判について、公開の法廷における対審および判決によらずに判断を下すことは、憲法32条および82条に違反するか。その性質が「純然たる訴訟事件」にあたるかが問題となる。
規範
憲法82条1項の「裁判」とは、純然たる訴訟事件、すなわち対立する当事者間において権利義務の存否を確定し、法律上の争訟を解決する手続を指す。一方、非訟事件は、裁判所が後見的な立場から合目的的に権利関係を形成するものであり、公開の法廷での対審・判決は憲法上要求されない。
重要事実
抗告人は、旧家事審判法9条1項乙類4号(現行の家事事件手続法に相当)に基づく子の監護に関する処分の審判について、公開の法廷における対審および判決の手続を経ていないことが、裁判を受ける権利(憲法32条)および裁判の公開原則(憲法82条)に違反するとして特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和59(ク)100 / 裁判年月日: 昭和59年10月4日 / 結論: 棄却
遺産の分割に関する処分の審判に対する抗告審の決定は、当事者の審尋を経ないでされても、憲法三二条、八二条に違反しない。
あてはめ
子の監護に関する処分は、家庭裁判所が子の福祉を図るため、後見的立場から合目的的かつ迅速に裁量権を行使して、具体的に監護の内容を定める形成的処分である。これは対立する権利関係の確定を目的とする純然たる訴訟事件ではなく、その性質は非訟事件の裁判に分類される。したがって、訴訟事件に要求される公開対審の手続を経る必要はないと解される。
結論
本件審判が公開の法廷における対審及び判決によらないでなされたとしても、憲法32条、82条に違反しない。
実務上の射程
非訟事件(家事事件含む)の憲法適合性を判断する際の基本判例である。答案上は、ある手続が憲法82条の保障を受けるか否かを論じる際、当該事項が「権利義務を確定させる純然たる訴訟事件」か「裁量により関係を形成する非訟事件」かを区別する指標として用いる。子の監護、遺産分割等の家事事件一般に広く射程が及ぶ。
事件番号: 昭和46(ク)52 / 裁判年月日: 昭和46年7月8日 / 結論: 棄却
家事審判法九条一項乙類七号に規定する親権者の変更の審判は、本質的に非訟事件の裁判であつて、公開の法廷における対審および判決によつてする必要はなく、したがつて、公開の法廷における口頭弁論に基づかないでされた右審判に対する抗告事件についてされた決定は、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 昭和39(ク)114 / 裁判年月日: 昭和41年3月2日 / 結論: 棄却
一 家事審判法第九条第一項乙類第一〇号の遺産の分割に関する処分の審判は、憲法第三二条、第八二条に違反しない。 二 家庭裁判所は、遺産の分割に関する処分の審判の前提となる相続権、相続財産等の権利関係の存否を、右審判中で、審理判断することができる。
事件番号: 昭和57(ク)329 / 裁判年月日: 昭和59年3月22日 / 結論: 棄却
家事審判法九条一項乙類九号の推定相続人廃除に関する審判は、憲法八二条、三一条に違反しない。
事件番号: 昭和39(ク)265 / 裁判年月日: 昭和41年6月22日 / 結論: 棄却
家事審判に対する不服申立は抗告訴訟によるべきであるとして、家事審判法第七条、第一三条、第一四条の憲法第三二条違背をいう所論は、家事審判に対する上訴制度について立法政策上の意見を述べるに帰着し、右憲法の条規違背をいうに当らないと解される。