家事審判法九条一項乙類七号に規定する親権者の変更の審判は、本質的に非訟事件の裁判であつて、公開の法廷における対審および判決によつてする必要はなく、したがつて、公開の法廷における口頭弁論に基づかないでされた右審判に対する抗告事件についてされた決定は、憲法三二条、八二条に違反しない。
親権者変更の審判と憲法三二条八二条
憲法32条,憲法82条,家事審判法9条1項乙類7号,民法819条6項
判旨
親権者の変更の審判は、家庭裁判所が子の福祉のために後見的立場から合目的的に裁量権を行使する非訟事件の裁判である。したがって、公開の法廷における対審および判決の手続を要せず、非公開の手続でなされても憲法32条、82条に違反しない。
問題の所在(論点)
親権者の変更の審判において、憲法82条1項が要求する「対審及び判決」の公開が必要となるか。すなわち、親権者の変更手続が憲法上の「裁判」として公開原則の対象となるかが問題となる。
規範
親権者の変更(民法819条6項)は、子の利益のために必要がある場合に家庭裁判所が後見的立場から合目的的に裁量権を行使する非訟事件の裁判である。この性質上、純然たる訴訟事件とは異なり、公開の法廷における対審および判決(憲法82条)によってする必要はない。
重要事実
男子である抗告人と女子である相手方との間において、親権者の変更(家事審判法9条1項乙類7号、現行の家事事件手続法169条1項)が申し立てられた。家庭裁判所が非公開の審判手続によって親権者の変更を決定したところ、抗告人が、公開の法廷における口頭弁論に基づかない決定は憲法32条(裁判を受ける権利)および憲法82条(裁判の公開)に違反するとして特別抗告を行った。
事件番号: 昭和59(ク)112 / 裁判年月日: 昭和59年12月20日 / 結論: 棄却
家事審判法九条一項乙類四号所定の子の監護に関する処分にかかる審判についての規定は、憲法三二条、八二条に違反しない。
あてはめ
親権者の変更手続は、当事者の権利の存否を確定する訴訟事件ではなく、子の福祉という公的な目的のために、家庭裁判所が当事者の意思に拘束されず裁量的に判断する非訟事件である。非訟事件は、その合目的的な性質から迅速かつ柔軟な審理が求められるため、対審および判決の公開という訴訟的厳格さを必要としない。したがって、公開の法廷における口頭弁論を経ることなく審判を行っても憲法違反にはあたらない。
結論
親権者の変更の審判は本質的に非訟事件の裁判であるため、公開の法廷における口頭弁論に基づかないでなされた決定に憲法32条、82条違反の違法はない。
実務上の射程
家事審判(非訟事件)における公開原則の要否に関するリーディングケースである。答案上では、憲法82条の「裁判」が『純然たる訴訟事件』を指すとする解釈の根拠として利用する。親権者変更に限らず、家事事件の合目的性・後見的性質を論証する際の論拠として有用である。
事件番号: 昭和50(ク)36 / 裁判年月日: 昭和50年7月11日 / 結論: 棄却
借地法八条ノ二は、憲法二九条に違反しない。
事件番号: 平成9(し)240 / 裁判年月日: 平成10年4月21日 / 結論: 棄却
少年が非行事実の存在を争っている保護事件において、家庭裁判所がその争点について少年法一六条に基づき捜査機関に援助協力を依頼して回答を得ながら、右回答の存在を附添人に了知させなかった措置は、妥当性を欠いたものであるが、右回答は附添人らがその内容を了知していた捜査書類を要約したものなどであって、証拠全体の中で重要な位置を占…
事件番号: 昭和39(ク)104 / 裁判年月日: 昭和39年4月28日 / 結論: 却下
民訴規則第四六条違背の抗告理由は不適式であり、該抗告は却下を免れない(民訴規則第五三条は上告審には適用がない)。
事件番号: 昭和48(ク)105 / 裁判年月日: 昭和49年9月26日 / 結論: 棄却
借地法八条ノ二第二項の借地条件変更に関する裁判は、憲法三二条、八二条に違反しない。