借地法八条ノ二は、憲法二九条に違反しない。
借地法八条ノ二の合憲性
借地法8条ノ2,憲法29条
判旨
借地条件の変更の裁判は、実質的に私法上の権利義務を確定するものではなく、裁判所が後見的見地から新たな法律関係を形成する非訟事件の性質を有する。したがって、公開の法廷における対審および判決を必要とせず、憲法32条、82条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
借地条件の変更の裁判(旧借地法8条の2第1項)が、憲法82条1項のいう「裁判」として、公開の法廷における対審および判決を要するか否か。また、同手続が憲法32条、29条に違反するか。
規範
憲法82条1項が対審および判決の公開を要求するのは、純然たる訴訟事件、すなわち権利義務の存否を確定し終局的に解決する手続に限定される。一方、非訟事件は、裁判所が後見的見地から当事者の法律関係を具体的に形成・決定する性質を有するため、必ずしも公開の法廷における対審・判決を必要としない。
重要事実
抗告人は、旧借地法8条の2第1項に基づく借地条件の変更の裁判が行われる際、非訟手続によってなされることが憲法32条(裁判を受ける権利)および82条1項(裁判の公開原則)に違反すると主張し、さらに同規定が憲法29条(財産権)にも違反すると争った。
事件番号: 昭和44(ク)419 / 裁判年月日: 昭和45年5月19日 / 結論: 棄却
一、借地法八条ノ二第一項による借地条件変更の裁判をする裁判所は、その前提となる借地権の存否につき当事者間に争いがあるときでも、その手続において、借地権の存否を判断したうえで、右裁判をすることができる。 二、借地法八条ノ二第一項による借地条件変更の裁判において借地権の存否を判断しても、右裁判は、憲法三二条、八二条に違反し…
あてはめ
借地条件の変更の裁判は、既存の権利の存否を確定するものではなく、借地権の内容を将来に向かって具体的に変更・形成するものである。この性質は、裁判所が合目的的な判断を行う非訟事件にあたる。非訟事件としての性質を持つ以上、訴訟事件を前提とする公開原則(憲法82条1項)の直接の適用は受けず、手続の非公開も憲法32条等に違反しない。
結論
借地条件の変更の裁判は非訟事件の性質を有する。したがって、非公開の手続でなされても憲法32条、82条1項に違反せず、また憲法29条にも違反しない。
実務上の射程
憲法上の「裁判の公開」の射程を画する重要判例である。答案上は、非訟事件と訴訟事件の区別(権利形成か権利確定か)を論じる際の基準として用いる。本判決は非訟事件における憲法適合性の論点において、大法廷決定の趣旨を継承し、形成的な裁判手続の合憲性を肯定する根拠として引用可能である。
事件番号: 昭和48(ク)105 / 裁判年月日: 昭和49年9月26日 / 結論: 棄却
借地法八条ノ二第二項の借地条件変更に関する裁判は、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 昭和49(ク)236 / 裁判年月日: 昭和49年9月27日 / 結論: 棄却
借地法九条ノ三第一項による競落建物の敷地賃借権譲渡許可の裁判において賃借権の存否を判断しても、右裁判は、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 昭和26(ク)13 / 裁判年月日: 昭和26年9月26日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、原決定に憲法違反の判断が含まれる場合に限られ、単なる民事訴訟法規の解釈の誤りを主張するものは実質的な違憲の主張に当たらないため、不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、高等裁判所が最初の抗告審としてなした決定に対し、民事訴訟法409条ノ4(旧法)の準用による異議の申立…
事件番号: 昭和26(ク)28 / 裁判年月日: 昭和26年5月9日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、法律に特別の定めがある場合に限り認められ、民事事件においては旧民事訴訟法419条の2(現行336条1項)が定める憲法違反を理由とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人は、何らかの裁判(詳細は判決文からは不明)を不服として、最高裁判所に対し抗告を申し立てた。しかし…