一、借地法八条ノ二第一項による借地条件変更の裁判をする裁判所は、その前提となる借地権の存否につき当事者間に争いがあるときでも、その手続において、借地権の存否を判断したうえで、右裁判をすることができる。 二、借地法八条ノ二第一項による借地条件変更の裁判において借地権の存否を判断しても、右裁判は、憲法三二条、八二条に違反しない。
一、借地条件変更の裁判において借地権の存否を判断することができるか 二、借地条件変更の裁判において借地権の存否を判断することと憲法三二条、八二条
借地法8条ノ2第1項,憲法32条,憲法82条
判旨
借地条件変更の裁判において、裁判所は前提となる借地権の存否を非訟事件手続の中で自ら判断でき、この判断には既判力が生じないため、別途訴訟で争うことが可能である。そのため、借地権の存否に争いがあっても、訴訟での確定を待たずに非訟手続で前提事項を決定しても憲法32条及び82条に違反しない。
問題の所在(論点)
借地条件変更等の借地非訟事件において、前提となる権利関係(借地権の存否)に争いがある場合、裁判所は訴訟による確定を待たずに自らその存否を判断できるか。また、その運用は憲法32条及び82条に違反しないか。
規範
借地非訟事件手続を行う裁判所は、前提となる法律関係(借地権の存否等)に争いがある場合でも、民事訴訟による判決の確定を待つことなく、自らその存否を判断して裁判をすることができる。ただし、この非訟手続における前提事項の判断には既判力が生じないため、当事者は別途民事訴訟を提起してその存否を確定させることを妨げられず、訴訟で前提事項が否定されれば非訟裁判もその限度で効力を失う。
重要事実
抗告人は、借地法8条の2第1項に基づく借地条件変更の裁判を求める申立てを行ったが、その前提となる借地権の存否について争いがあった。抗告人は、借地権の存否のような訴訟事項は対審公開の判決手続によってのみ終局的に確定されるべきであり、非訟手続でこれを判断することは憲法32条(裁判を受ける権利)及び82条(裁判の公開)に違反すると主張して抗告した。
事件番号: 昭和50(ク)36 / 裁判年月日: 昭和50年7月11日 / 結論: 棄却
借地法八条ノ二は、憲法二九条に違反しない。
あてはめ
借地非訟手続における前提事項の判断は、あくまで便宜的なものであり既判力を有しない。したがって、当事者は別途訴訟を提起して権利の存否を確定させる道が残されており、通常の裁判を受ける機会は保障されている。訴訟において非訟手続の前提となった権利関係が否定されれば、非訟裁判の効力も失われるため、簡易迅速な解決を目的とする非訟手続において裁判所が自ら前提事項を判断することは合理的であり、憲法に抵触しないと解される。
結論
裁判所は、判決の確定を待たずに借地権の存否を判断して借地条件変更の裁判をすることができ、本件の運用は憲法に違反しない。抗告を棄却する。
実務上の射程
借地非訟事件(現行の借地借家法17条以下)全般に射程が及ぶ。答案上は、非訟事件手続において実体上の権利義務の存否を判断することの可否が問われた際、既判力の欠如と訴訟による再審査の可能性を根拠に、合憲性・適法性を肯定する論理として活用する。
事件番号: 昭和49(ク)236 / 裁判年月日: 昭和49年9月27日 / 結論: 棄却
借地法九条ノ三第一項による競落建物の敷地賃借権譲渡許可の裁判において賃借権の存否を判断しても、右裁判は、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 昭和48(ク)105 / 裁判年月日: 昭和49年9月26日 / 結論: 棄却
借地法八条ノ二第二項の借地条件変更に関する裁判は、憲法三二条、八二条に違反しない。
事件番号: 昭和26(ク)48 / 裁判年月日: 昭和26年5月15日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に許容された場合に限定される。民事事件においては旧民事訴訟法419条の2(現行336条1項)所定の憲法違反を理由とする場合に限られ、その他の理由による抗告は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人が、下級審の決定に対して最高裁判所に抗告を…
事件番号: 昭和27(ク)55 / 裁判年月日: 昭和32年3月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告を受理できるのは訴訟法で特に許された場合に限られ、実質的に法令違反を主張するに過ぎないものは、違憲を名目とするものであっても特別抗告として不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、原裁判所が抗告人を審尋する等の手続を経ることなく裁判を行ったことに対し、最高裁判所に抗告を申し立てた…