少年が非行事実の存在を争っている保護事件において、家庭裁判所がその争点について少年法一六条に基づき捜査機関に援助協力を依頼して回答を得ながら、右回答の存在を附添人に了知させなかった措置は、妥当性を欠いたものであるが、右回答は附添人らがその内容を了知していた捜査書類を要約したものなどであって、証拠全体の中で重要な位置を占める性質のものとはいえず、少年に対しては、審判全体を通じて十分な防御の機会が保障され、回答の存在を知らなかったことにより防御上特段の不利益を生じたといえないことなど回答の重要性の程度、性質、審判全般における少年の具体的な防御の状況等に照らすと、いまだ裁量の範囲を逸脱した違法なものということはできない。
少年法一六条に基づく援助協力の依頼により捜査機関から送付を受けた証拠の存在を附添人に了知させなかった措置が違法とはいえないとされた事例
少年法16条
判旨
非行事実を争う少年事件において、裁判所が捜査機関から得た回答の存在を附添人に知らせず事実認定の資料とした措置は、妥当性を欠くものの、回答の重要性や防御の状況に照らし、裁量の範囲を逸脱した違法とまではいえない。
問題の所在(論点)
少年が非行事実を否認している事件において、家庭裁判所が少年法16条に基づく援助協力依頼により得た回答を附添人に通知せず、事実認定の資料とした措置が、裁判所の裁量権の範囲を逸脱し違法となるか。
規範
少年法16条に基づく援助協力依頼により取得した証拠について、非行事実の存在を争っている保護事件では、附添人が選任されている場合、特段の事情のない限りその旨を通知するのが相当である。もっとも、不告知の措置が違法(裁量逸脱)となるかは、①回答の重要性・性質、②審判全般における少年の具体的な防御の状況等を総合的に考慮して判断すべきである。
重要事実
事件番号: 昭和60(し)3 / 裁判年月日: 昭和60年5月14日 / 結論: 棄却
少年法二三条二項による保護処分に付さない旨の決定に対しては、それが非行事実の認定を明示したものであつても、抗告をすることができない。
少年ら5名による恐喝・同未遂事件において、少年は犯人性を否認して全面的に争っていた。原原審は、共犯者の取調べ状況等につき警察署長及び検察官に援助協力を依頼し、得られた回答の一部を考慮して証人供述の信用性を肯定し、非行事実を認定した。しかし、原原審は附添人に対し、援助協力の依頼をした事実も回答を得た事実も知らせていなかった。なお、当該回答は、附添人が既に了知していた捜査書類を要約したものや検察官面前での供述態様を記載したもの等であった。
あてはめ
本件措置は相当性を欠く。しかし、①本件回答は既存の捜査書類の要約等であり、証拠全体の中で重要な位置を占める性質のものではない。また、②審判全体を通じて証人尋問等の十分な防御の機会が保障されていた。これら回答の性質や審判の状況に照らせば、回答の存在を知らなかったことにより防御上の特段の不利益が生じたとはいえず、裁判所の合理的な裁量の範囲内にとどまる。したがって、手続上の違法があるとは認められない。
結論
本件における不告知の措置は妥当性を欠くが、裁量の範囲内であり違法ではない。したがって、非行事実を認定した原決定の結論は正当である。
実務上の射程
少年審判における職権主義的構造と適正手続の要請を調整する枠組みを示したものである。非行事実否認事件において、家裁が職権で収集した証拠を少年側に開示しないことは原則として「妥当性を欠く」が、国家賠償請求や抗告理由としての「違法」に至るには、証拠の重要性や具体的防御の不利益といった加重的な要素を要することを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和59(し)20 / 裁判年月日: 昭和60年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しが認められるためには、確定審判の非行事実の認定を覆すに足りる、審判権がなかったことを認め得る明らかな資料が必要である。本件では、当初の自白の任意性・信用性が高く、後出の否認供述や新証拠(ナイフ)に不自然な点があることから、同要件を充たさないと判断された…
事件番号: 平成1(し)121 / 裁判年月日: 平成2年10月24日 / 結論: 棄却
家庭裁判所は、事実調査のため、捜査機関に対し、補充捜査を促し、又は少年法一六条の規定に基づいて補充捜査を求めることができる。
事件番号: 平成20(し)147 / 裁判年月日: 平成20年7月11日 / 結論: その他
強盗致傷の非行事実を認定して少年を中等少年院送致とした家庭裁判所の決定が,抗告審で事実誤認を理由に取り消されて差し戻された場合において,受差戻審の家庭裁判所が検察官の申し出た証拠を取り調べなかった措置は,上記抗告審の決定が,受差戻審に更なる証拠調べを求めたものではなく,上記証拠を取り調べることにより同決定の結論が覆る蓋…
事件番号: 昭和40(し)7 / 裁判年月日: 昭和40年6月21日 / 結論: 棄却
少年法第六条第三項により児童相談所長から事件送致を受けた家庭裁判所が、同法第一八条第二項により、少年の自由を制限し、またはその自由を奪うような強制的措置を指示してそお事件を児童相談所長に送致する旨の決定をした場合、これに対して抗告を申し立てることはできない。